本研究の目的は巨大分散システムを分散計算構造の観点から統一的に理解することである.平成26年度が最終年度になる予定であったが,研究期間を一年間延長し,平成27年度も実施した.延長理由は(1)Population Protocolモデルにおける振動現象の研究と,(2) 3次元的な分散モデルの研究の伸展が予想以上であったことであり,従って,本年度はこの2点について研究を行った.まず(1)について: PopulationProtocolモデルの基本要素の一つにスケジューラがあり,公平性を持つ決定的で集中的なスケジューラが使用されることになっている.しかし,このような基本的なPopulation Protocolモデルの下では,自律分散的な問題である自励振動を発生する問題の本質が典型的な集中型制御を指向するリーダ選挙問題であることが分かった.次に,PopulationProtocolモデルを自然分散システムのモデルに近づけることを目的として,スケジューラを確率的で分散的なものに変更して,自励振動を設計した.次に(2)について: 3次元空間を移動するロボットの平面合意問題では,回転群の形,特に,群と群が作用する点集合が,合意問題の可解性に本質的であることが既に分かっていた.本研究では,まず,自律分散ロボットモデルと他の分散計算モデルの関係を考察し,自律分散ロボットモデルを自然に拡張することで,巨大分散システムを分散計算構造を検討するための一般モデルとすることができることを確認した.そして,計算機ネットワークモデルやPopulation Protocolモデルを含む複数のモデルについて,群が対称性解消に果たす役割を検討した.多くの性質を導くことができているが,現状では,検討は未完成であり,科研費を頂いて,並行して行っている研究に引き継いで行きたい.
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