研究課題/領域番号 |
24650009
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
末吉 豊 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80128040)
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研究分担者 |
工藤 愛知 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00112285)
原澤 隆一 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10363467)
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キーワード | 総当たりリーグ戦 / スケジューリング / ホーム・アウェー / ブレイク間隔列 / 敵味方表 / ブレイク間隔の最大値 |
研究概要 |
本研究では,ホーム・アウェーの区別がある総当たりリーグ戦の数理的構造の解明と,公平なスケジュールの効率的作成手法の開発を目的としている.特に,ホームゲームまたはアウェーゲームの連続をブレイクとよぶが,本研究では各チームのブレイクが1回となるリーグ戦(公平なリーグ戦という)の構造解明とスケジュール作成を主要な対象としている. 公平なリーグ戦のスケジュールが作成可能(実行可能という)であるための必要条件はブレイク間隔列が満たす組合せ論的な不等式で記述できるが,中でもブレイク間隔の最大値がスケジュール作成の容易さに深く関わっていることを計算機による数え上げと理論的考察により,24年度の研究で明らかにした. 25年度は引き続き,理論的な検討を行い,「ブレイク間隔の上限値は,チーム数が2のk乗のときに1増加し,その後一旦元に戻り,チーム数が2のk乗+2の(k-2)乗のときに再び1増加し,その後一旦元に戻り,チーム数が2のk乗+2の(k-2)乗+2の(k-4)乗のときに再び1増加,・・・ということを繰り返す」ことを組合せ論的な手法で証明した.この上限値は,チーム数が2のk乗のときと2のk乗+2の(k-2)乗のときは実際に最大値であるが,その他の場合は個別に示す必要がある.以上の結果から,ブレイク間隔の最大値については主要な結果が得られたことになる. 更に,ブレイク間隔の最大値が5以下のリーグ戦を数え上げ手法で分類し,42チーム以下で分類を完成させた.このようなリーグ戦は30チーム以下および34チームから38チームでは存在せず,ブレイク間隔列の cyclic rotation の違いを除くと,32チームで1つ,40チームで28個,42チームで12個存在する.これについては,25年度中に論文として発表した.この結果は計算機による数え上げおよび理論的な結果と整合している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブレイク間隔の最大値の研究は,以前に考察した開幕条件,閉幕条件を満たす公平なリーグ戦の分類およびスケジュール作成から発展したものである.開幕条件,閉幕条件は人工的な条件であるが,分類およびスケジュール作成を容易にする大きな要因であった. これらの条件がブレイク間隔の最大値に関係していることに24年度中に気付き,ブレイク間隔の最大値を増加させたときの公平なリーグ戦の分類を40チーム以下のリーグ戦で手作業で行い,更にプログラムを作成して,64チーム以下のリーグ戦に対して計算機を用いて調べた.これらから観測された事実の一部については24年度中に証明できた. 25年度になって,必要条件の不等式をうまく組み合わせることにより,チーム数 2n を具体的に与えれば証明できることがわかった.しかも,その手法で66チーム以上の場合を手作業で調べることにより,更に詳しい事実が観測された.一般の n に対する証明は簡単ではなかったが,個別の n に対する証明を詳しく検討し,数学的帰納法的な証明に持ち込むことにより,当初より精密化された形で証明を完成させることができた.これらの結果は,研究計画を立てた当初は予測していなかった極めて大きな進展であり,研究の方向として正しく進んでいると考えられる. 本研究の大きな目標として,「公平なリーグ戦が実行可能であるための必要条件は十分条件でもあるだろう」(宮代-岩崎-松井の予想)の証明があるが,これに関しては今のところ具体的な進展がない.また,連続する対戦相手がもたらす持ち越し効果を考慮したスケジュール作成や多様な制約に対応したリーグ戦のスケジュール作成についても,25年度は時間的に検討する余裕がなかった. 以上のように,予想を超えて大きく進展している部分と検討が遅れている部分とがあるが,3年間の研究としてはおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
ブレイク間隔の最大値は,公平なリーグ戦全体を統制する重要な不変量と考えられる.1980年代に,de Werraにより,公平なリーグ戦の研究が始まった当初はグラフ理論的な視点からの研究が主流で,グラフの様々な構造をスケジュール作成に応用する方向であった.このような中で,基準スケジュールとよばれるスケジュールが構成され,これを変形していくつかのスケジュールが構成された.ブレイク間隔の視点から見ると,基準スケジュールはブレイク間隔の最大値が(実行可能である公平なリーグ戦全体の中で)最小となるようなスケジュールであるが,本研究で検討しているブレイク間隔の最大値を与えるスケジュール(先端スケジュールと名付けた)は基準スケジュールの対極にあるスケジュールであり,一般の実行可能なスケジュールはその中間にある. 24年度,25年度の研究で,先端スケジュールおよびブレイク間隔の最大値について,チーム数が比較的少ない場合の分類と基本的な定理の証明が得られた.分類についてはすでに論文として公表済みであるが,ブレイク間隔列の数え上げ手法と主要な定理の証明については今後整理して論文にまとめる作業が残っている. 宮代-岩崎-松井の予想の証明は現時点では難しいかも知れないが,先端スケジュールの構成手法を応用して,性質の良いリーグ戦に対するスケジュール作成は可能と思われる.最終的には,スケジュールを部分から構成して最適化する手法が有効であると考えられるが,そのための指標となる不変量を発見することが重要である. 本研究の手法は,ブレイク間隔列と敵味方表を用いる組合せ論的,数え上げ理論的なものであるが,これをグラフ理論的に解釈することが,予想の証明を含め,今後の研究を大きく進展させる上で重要な到達点になると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
論文別刷料金の割引により,当初予定より少ない使用額となった. 25年度に引き続き,成果発表および情報収集のための旅費,論文投稿料,情報科学関連の図書購入に使用する予定である.特に,24年度,25年度に得た成果については今後論文として仕上げ,投稿する予定である.また,情報科学関連の図書については,グラフ理論や最適化理論,組合せ数学,数え上げ理論,応用数学関連の図書を購入予定である.
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