研究課題/領域番号 |
24650012
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
増澤 利光 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50199692)
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研究分担者 |
大下 福仁 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (20362650)
角川 裕次 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (80253110)
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キーワード | アルゴリズム / 分散アルゴリズム / 分散システム / ネットワーク / メゾスコープ / 無線ネットワーク / P2Pネットワーク / センサネットワーク |
研究概要 |
本研究の目的は,超大規模動的分散システムを対象とした分散アルゴリズムの,メゾスコピック設計・解析法を新たに提案し,その有効性を実証することである.具体的には,以下の研究課題に取り組む.1.メゾスコピックアプローチのための超大規模分散システムモデルの検討.2.事例研究による,メゾスコピックアプローチの有効性の実証.3.メゾスコピックアプローチに基づく設計・解析法の方法論の検討. 今年度は,当初の計画通り,主として,研究課題2に取り組んだ.得られた研究成果を以下にまとめる. (1) 従来の分散システムモデルにおけるメゾスコピックレベル設計を可能にするために,メゾスコピックレベルの対象としてモバイルエージェントを取り上げ,モバイルエージェントを利用した分散システムについて検討した.特に,部分集合問題や均一配置問題などのメゾスコピックアプローチに有用な基本的問題に対し,分散アルゴリズムを提案した. (2) P2Pネットワークに対し,効率的な分散処理を可能とするメゾスコピックレベル構造として,仮想ネットワークを構築するための分散アルゴリズムを提案した.具体的には,P2Pネットワークの論理構造としてよく利用される,弦付きリングを仮想ネットワークとして構成する自己安定手法を提案した. (3) 無線ネットワークに対し,メゾスコピックレベル構造として仮想グリッドを導入し,仮想グリッドを利用した経路制御のための分散アルゴリズムを提案した.また,メゾスコピックレベル構造として,クラスタ構造を導入することにより,センサネットワークでの基本問題である,局所トリガ数え上げ問題に対して,効率的な分散アルゴリズムを実現できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,超大規模動的分散システムを対象とした分散アルゴリズムのメゾスコピック設計・解析法について検討するために,以下の研究課題に取り組んでいる.1.メゾスコピックアプローチのための超大規模分散システムモデルの検討.2.事例研究による,メゾスコピックアプローチの有効性の実証.3.メゾスコピックアプローチに基づく設計・解析法の方法論の検討. 当初の予定通り,課題1および2について,一定の成果を得ており,最終年度に,課題3に取り組むための準備が整っている.特に,今年度に主として取り組んだ課題2については,以下のような結果を得ており,順調に進展していると考えられる. (1) 空間的,時間的に変動しうるサブシステムを有する分散システムに対しては,高度な自律適応性が要求されるが,その実現法として,モバイルエージェントを活用することが効果的であると考えている.そこで,分散システムのモバイルエージェントを利用したメゾスコピック設計において,多くのアプリケーションに活用可能と考えられる基本的な問題を整理し,その問題に対する分散アルゴリズムを提案している. (2) 仮想ネットワークは,複雑な分散処理の効果的実行を可能とするメゾスコピックレベル構造として期待できる.そこで,本研究では,空間的,時間的に変動しうる動的ネットワークにおいて,所定の仮想ネットワークを自己組織化するための分散アルゴリズムを提案している. (3) 無線ネットワークでは,仮想グリッドやクラスタ構造をメゾスコピックレベル構造として利用することが期待される.そこで,本研究では,仮想グリッドやクラスタを利用した,効率的な分散アルゴリズムを提案している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究は,おおむね順調に進展しており,今後についても,当初の計画通り,以下の研究課題に取り組む.1.メゾスコピックアプローチのための超大規模分散システムモデルの検討.2.事例研究による,メゾスコピックアプローチの有効性の実証.3.メ ゾスコピックアプローチに基づく設計・解析法の方法論の検討. 特に,最終年度は,研究課題2および3に取り組む. 研究課題2については,本研究で確立を目指すメゾスコピック設計解析法の有用性を実証するために,引き続き事例研究を行う. 研究課題3については,メゾスコピックアプローチの事例研究で得た知見をベースに,超大規模分散システムのためのメゾスコピック設計・解析の方法論の構築を目指す.この方法論を構築できれば,メゾスコピックアプローチを超大規模分散システム設計法の新た なパラダイムとして確立することへの道が拓け,新たな研究領域の開拓に通じるものと期待している.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:パソコンは計画通りに購入を済ませているが,論文の取りまとめに時間がかかったため,論文別刷代として計上していた予算の執行が遅れている.また,これまでの成果と今後の計画について,国内の専門家から意見を聴取することの必要性を感じており,一部を謝金として,平成25年度末に使用する予定であった.しかし,先方との日程調整がつかず,実施が平成26年度初頭にずれてしまった.これが,物品費について,次年度使用額が生じた主たる理由である. 旅費:国際会議の開催日の都合で,平成25年度に投稿を予定していた国際会議に投稿できなかった.また,平成25年度に海外からの研究者招へいを予定していたが,先方の都合で,招へいを平成26年度初頭に実施することとなった.これが,旅費について,次年度使用額が生じた主たる理由である. 旅費ついては,平成25年度からずれこんでしまっている使用計画を含め,平成26年度初期に使用する計画が既にいくつか確定している.平成26年度の助成金と併せ,これまでの未使用額にについても,平成26年度に使用する計画を立てている. また,物品費についても,平成26年度の助成金と併せ,これまでの未使用額についても,論文別刷代等(一部は謝金として使用)として平成26年度に使用する計画を立てている.
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