研究課題/領域番号 |
24650015
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
杉原 厚吉 明治大学, その他の研究科, 教授 (40144117)
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キーワード | ロバスト計算 / 不可能立体 / 不可能モーション / 走査法 / 位相優先法 / 直線骨格線 / 錯視 |
研究概要 |
本研究の目的は,幾何問題の背景空間次元を上げたり下げたりして別の次元の問題に翻訳することによって,計算効率と数値的安定性を向上させるアルゴリズム設計技法を開発することである.この目的に沿って研究を行い,次の実績を得た. 2次元のだまし絵を手がかりとして3次元の不可能立体を設計する手法の開発において,人の錯視の性質を取り込んで,より錯視量の多い立体を作ることができるようになった.人が画像から立体を認識するとき,直角という解釈を好む傾向,および,対称性の高い立体を好む傾向があることに着目し,それを手がかりとして錯視が強く起こる立体を設計する方法を開発した. 多角形の重みつき直線骨格線を計算するロバストなアルゴリズムを構成した.このアルゴリズムでは,直線骨格線を,多角形を壁とする家の屋根の構造として解釈することにより3次元へ移動し,次にこの屋根構造を水平な走査平面で切断してできる断面構造へ次元を再度下げて追跡することによって,屋根の棟の形で骨格線を生成する.これは走査法とよばれる計算幾何学アルゴリズム設計原理を位相優先法と組み合わせた新しいアルゴリズムである.その性能を計算実験でも確かめることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次元の移動によるアルゴリズムの効率向上と数値的安定性を達成する幾何アルゴリズム設計原理を構築するという最終目標へ向かって,さらに二つの新しい具体的問題に対する次元移動効果を確認することができた.本年度の目標も,具体例を通して次元移動法の経験を蓄積することであったので,その目標は順調に達成できている.
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今後の研究の推進方策 |
不可能立体・不可能モーションの設計原理の構築に関しては,人の直角選好性と対称構造選好性を発見できたので,それに基づいて,錯視量の強さを推定する定量的指標を構成する.これによって,だまし絵という2次元図形を解析するだけで,不可能立体という3次元構造の錯視効果を予測でき,次元移動による立体設計の効率化を図る. 今年度に開発した重みつき直線的骨格線の計算法を利用して,幾何学的錯視の仕組みを統一的に説明できる視覚モデルを作る.これは,2次元図形をぼかしたとき対応する1次元骨格線の位置と形がずれる現象に着目して,このずれから錯視を説明しようとするアイデアである.このアイデアをミュラー・リヤー錯視,ポッケンドルフ錯視,ポンゾ錯視,ツェルナー錯視などの古典的錯視に適用して,それらの錯視の起こる仕組みを統一的に説明する数理モデルを追求する. 今までに具体的問題に対して開発してきた次元移動アルゴリズムを統一的視点からまとめ,次元移動法という幾何アルゴリズム設計原理を構築する.
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次年度の研究費の使用計画 |
IT技術の進歩により,購入を予定していた性能のパーソナルコンピュータが予定より安く購入できたために,残額が生じたが,それをパーソナルコンピュータ関連の消耗品に当てるために次年度に繰り越した. 購入したパーソナルコンピュータのハードディスク内容のバックアップのための外部メモリなどの消耗品の購入にあてる予定である.
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