研究課題/領域番号 |
24650022
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
温 暁青 九州工業大学, 情報工学研究院, 教授 (20250897)
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研究分担者 |
宮瀬 紘平 九州工業大学, 情報工学研究院, 助教 (30452824)
梶原 誠司 九州工業大学, 情報工学研究院, 教授 (80252592)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | LSIテスト / 低電力テスト / テスト電力調整 / 遅延テスト / 微小遅延故障 / 活性化パス / 高信頼化 / 高品質化 |
研究概要 |
平成24年度には、集積回路内部のクロック周期とクロックスキューとの関係の解明を主要目標に研究活動を展開した。集積回路の電源設計パラメータ(強弱(ストラープの数で調整)、位置)及びパッケージのタイプ(wire-bond、flip-chip)による多くの組合せに対して、ITC’99ベンチマーク回路及び実回路設計データを対象に高精度EDAツールを用いて回路内部のパス遅延の詳細な解析を行った。それを通じて、以下の研究成果が得られた。 成果1: 活性化パスの起点FFと終点FFの内部クロックピンの間で算出する内部クロック周期はテスト入力による論理スイッチングから影響を受けることが確認された。また、この影響は電源設計のパラメータ(特に強弱)に大きく依存することも確認された。 成果2: 実速度スキャンテストのキャプチャモードに関して、内部クロック周期に大きく影響するテスト入力が全体の数パセントと少ないことが確認された。また、このようなテスト入力について詳しく解析した結果、テスト入力の回路全体に与える論理スイッチング量(グルーバル論理スイッチング)はそれほど高くないものもあり、内部クロック周期への影響は主に局所論理スイッチング(ローカル論理スイッチング)によるものだと分かった。 成果3:従来の論理スイッチング評価基準であるWSA(Weighed Switching Activity)は精度が低く、内部クロック周期に大きく影響するテスト入力の抽出ができないことが分かった。内部クロック周期に影響する論理素子の近傍のローカル論理スイッチングによる抽出の必要性が明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の最大研究目標である「テスト入力による論理スイッチングがクロックスキューに与える影響の把握」が達成できたので、本研究はおおむね順調に進展いると言える。当初は、試作回路によってテスト入力による論理スイッチングの影響を調べる予定でしたが、回路試作費用と時間の制約から回路シミュレーションによる評価実験に切り替えた。その結果、回路試作(1回路のみの予定)より実回路設計データを含む多くの回路及び多く実験条件で実験でき、テスト入力による論理スイッチングの影響について予想以上な示唆に富む豊富な実験データを得ることができた。これらのデータの分析によって得られる知見によって、テスト入力による論理スイッチングの影響への対応技術の開発(平成25年以降)の土台ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年の実施で得られた成果を踏まえ、平成25年度は「テスト入力に対するクロックスキューの定量化技術」を主な目標として研究を進める。 研究方法:与えられたテスト入力ベクトルに対してLaunch-On-Capture(LoC)方式で実速度スキャンテストが行われる場合、Launch操作が引き起こす論理スイッチングによって内部クロックスキューを論理シミュレーションで得られる情報で定量化する技術を提案する。ここでの論理スイッチングは、クロックパスの長さとクロックパス周辺部分の大きさを考慮した論理スイッチングの相対的強度で表現する。平成24年度に整備した回路シミュレーションに基づく評価実験環境を用いて、定量化技術の精度検証と改良を行う。 研究計画: まず、論理シミュレーションの結果とクロックパス周辺のレイアウト情報から論理スイッチングの相対的強度を表せる数式を導出する。次に、それに基づいて内部クロックスキューの定量化技術を提案する。平成24年度に整備した回路シミュレーションに基づく評価実験環境で様々な条件(入力、電源電圧、機能動作周期など)で定量化技術の精度を検証し、必要に応じて改良する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年には、実験用プログラム作成、実験の実施、及び、実験データの解析に関して大きな作業量が予想される。スムーズに研究活動を進めるために、大学院生4人程度を上記の実験関連作業に従事させる予定である。そのため、「学生謝金」として30万円を計上する。また、研究発表及び研究情報収集のため、1回の海外出張と2回の国内出張を予定している。そのため、「旅費」として30万円を計上する。更に、研究活動に必要な印刷費や実験データ保存用媒体の購入費などのため、「その他」として10万円を計上する。
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