車同士の衝突防止および歩車間の事故防止のために、車車間・歩車間の距離、相対的位置関係、密度に応じて各車両・歩行者が発する位置通知無線信号(ビーコン)の送信頻度、送信出力を動的に制御し、無線資源の効率的利用と安全性の確保を両立するアルゴリズムの開発を目的として、以下の取り組みを行った。車車、歩車間の距離・位置関係、速度において各事故類型にたいしてビーコンに求められる通知範囲、通知頻度を検討し、必要とされるビーコン到達基準を再整理した。また、ビーコン送信出力制御に取り組む独カールスルーエ大、米ゼネラルモータース、米ノートルダム大、ETSI等の成果を整理した。これらの知見に基づき、ビーコン送信電力をビーコン送信のたびに弱~強に段階的に変更するパターンを周期的に繰り返す方式を設計した。本手法では、周辺車両密度や通信混雑状況を把握する方法を持たず、各車両は常に同じ挙動を繰り返す。車車間通信・詳細電波伝搬モデルを含むシミュレータを導入し、提案手法のシミュレーション評価を行った。ビーコンの送信周期、平均電力、最大・最小電力、電力使用順序が異なる様々なパターンについて評価を行い、固定送信電力の場合、ETSI-DCC、ランダム送信電力選択方法と比較し、送受信者間距離に対するパケット受信率に関しては同程度の送信電力を持つ他手法に対して顕著な違いが見られないものの、遠距離でのパケット到着間隔に関しては、長い到着間隔が発生する頻度が少ないこと、すなわち提案手法によって安全性を確保するための車両位置通知の欠落期間を減少する効果が得られることを確かめた。さらに、この効果が送信電力の使用順序を昇順や降順ではなく、ばらばらにすることで若干向上することが確かめられた。
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