本研究では、近年、盛んに開発されている位置情報サービスにおいて、ユーザの位置プライバシーを保護するための手法の確立を目的とした。具体的には、ユーザの正確な位置や移動履歴をサービス提供者に知られることなく位置情報サービスを享受するために、複数のダミーの位置情報をサービス提供者に送信する手法を構築した。 最終年度の平成25年度は、まず、ユーザの移動が高い確率では予測できない環境を想定し、ユーザが既知の移動プランから外れて行動した場合に、提案手法が受ける性能上の影響を検証した。その検証結果に基づいて、平成24年度の考案手法を拡張し、ユーザの行動が移動プランから外れた場合にも対応可能なダミー生成手法を検討した。この拡張手法では、移動速度や経路、停止時間などの軽微なプランの変更であれば、ダミーの移動も軽微な変更で対応し、停止場所の変更などの場合は、ダミーの停止場所や移動経路等の大幅な変更を試みる。 さらに、ショッピングやレストランなどユーザの移動特性・嗜好なども考慮するように、平成24年度の考案手法を拡張した。この拡張手法では、ユーザの過去の移動・訪問履歴からユーザの移動特性をモデル化し、そのモデルに従い、よりユーザに(嗜好を含めて)類似して自然に移動・停止を行うダミーを生成する。 2年の研究計画全体としては、従来研究の多くがユーザの行動などについて非現実的な想定をしていることに対して、より現実的な想定のもと、実用性の高いプライバシー保護手法を実現できたものと考える。さらに、考案手法により生成したダミー情報が、ユーザと識別が困難であり、ユーザの位置プライバシーを十分に保護できることを確認した。
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