研究課題
本研究では,自己知覚理論を中心とした心理学・認知科学の知見を応用し,VRにより生成・提示した感覚刺激によって身体知覚を変調することで身体イメージを操作し,感情を生起するための方法論を提案した.そして,この方法論に基づいて構築したインタフェースの評価を通じて,さまざまな感情を喚起可能なことを示した.具体的には,変形した表情,擬似心拍操作,温度感覚操作をフィードバックする手法を中心とし,VR技術で生成した刺激が自己の身体反応の変化であると感じられるような可体験化手法を構築し,複数の感情を喚起する基礎的な手法を開発した.まず,外的対象に反映された身体をバーチャルに変化させ,外部感覚を通じた自己知覚に基づいて認知される身体イメージを変調し,感情を喚起させる手法を開発した.具体例として,表情フィードバック仮説の知見を応用し,コンピュータによって変形させた表情を視覚的にフィードバックする鏡形インタフェースを構築し,評価実験を通してフィードバックした表情に対応する感情を喚起可能なことを明らかにした.さらに,この手法による感情喚起によって選好判断やクリエイティビティに影響を与えることも可能であることを示した.また,自己帰属感が付与された外的対象(「拡張された身体」)を含めた身体イメージを生成・変調することで感情を生起する手法を開発した.実際の身体反応と外的対象の動作に対応を作ることで,外的対象に自己帰属感を付与し,その対応にずれを与えることで認知される身体イメージを変調することにより,感情を生起する手法である.具体例として,能動的呼吸を通じて風船に対する自己帰属感を誘発し,風船の変化の原因を呼吸の変化の原因として認知させることで緊張感を喚起するアート作品“Interactonia Balloon”を構築し,ユーザスタディにおける評価を通して,提案手法の実現可能性を検討した.
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
日本バーチャルリアリティ学会論文誌
巻: Vol.18, No.3 ページ: 361-370