研究課題/領域番号 |
24650053
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
岡田 美智男 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50374096)
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キーワード | 発話生成 / 社会的相互行為 / 聞き手性 / 宛て名性 / 説得性 |
研究概要 |
言い直しや言い淀みなど、自然な発話における非流暢性は、その要因を話し手の内部の生成メカニズムに一方的に帰属させ、説明することが多い。本研究では、発話は話し手と聞き手との相互行為的な調整の結果として組織されたものと捉え直し、これらの観点から、(a)聞き手の存在を予定しつつ、その聞き手との相互行為的調整に基づいて発話の組織化を行う、発話生成システムを実現すること、(b)この発話生成システムを用い、発話における非流暢性を生み出す要因やその役割を構成的に明らかにすることを目的としている。 本研究計画の二年目となる本年度は、昨年度に構築した聞き手との相互行為的な調整に基づいて発話の組織化を行う発話生成システムのプロトタイプ(Talking-Ally)を用いて、被験者実験を行い、発話における聞き手との相互行為調整の効果を志向姿勢の誘発や説得性の観点から多面的に調査した。これらの研究成果を、(1)国際会議(HCII2013)で口頭発表し、国際会議(iHAI2013)や国際ロボット展でのデモ展示を行った。(2) 社会的なロボティクスに関するジャーナル(IJSR)に論文投稿した。(3)国内のシンポジウムでも、関連する研究発表やデモ発表を5件行った。(4)ヒューマン・エージェントインタラクションに関するシンポジウムにおいて、本研究の発表がHAI Outstanding Research Award 最優秀賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発話の組織化を行う発話生成システムのプロトタイプ(Talking-Ally)を用いて被験者実験を行い、当初から期待していたような、発話における聞き手との相互行為調整の効果を志向姿勢の誘発や説得性の観点からの知見が得られた。研究成果の発表に関しても、国際会議(HCII2013、iHAI2013、国際ロボット展)、ジャーナル(IJSR)への論文投稿を行うことができた。また、ヒューマン・エージェントインタラクションに関するシンポジウムにおいて、HAI Outstanding Research Award 最優秀賞を受賞している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に得られた知見を反映させ、〈聞き手〉の特性に適応しながら、会話の調整方略を洗練させる適応学習機構を備えた発話生成システムを実現し、その有効性を幅広いユーザー層の立場から検証する。具体的には、次の研究項目を実施する。 (1) 会話調整方略を〈聞き手〉の特性に適応させ、洗練化する適応学習機構の開発:高齢者、障害者、子どもなど様々な特性をもった〈聞き手〉から、発話に対する関心・参加(engagement)を引き出すための会話調整方略や発話・行為のレパートリーを洗練させる適応学習機構を開発する。(2) 適応学習機構の適応過程を追跡し、多様な〈聞き手〉に対して、どのような会話調整方略や発話・行為のレパートリーを獲得したかを調査する。(3) 本発話生成システムの最終版を用い、その有効性を〈聞き手〉の随伴的行動に着目して、「その発話は〈聞き手〉を揺り動かすリアリティを備えるものなのか」という観点から検証する。これらの成果を適宜、国際会議やジャーナル論文として発表するとともに、最終報告書にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験が順調に進んで、新規のロボット構成部品の購入が必要ではなかったため。 新たな実験プログラム開発のための費用として使用する。
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