ERゲルは,電場により表面の滑り抵抗を制御できる新規な材料である.申請者はこれまでに,ERゲルを用いた電場で表面の滑り抵抗を制御して力の伝達を行うデバイスを開発してきたが,人体のような複雑な曲面に適用していなかった.昨年度は肘など単関節を対象にした,サポーター型ERゲル力覚提示装置を開発したが,十分大きな抵抗力が発生力せず,力覚提示としては不十分であった. そこで本年度は,ERゲルシートを多層化することで発生力の向上を行い,それを単関節である肘を対象にしたサポーター型ERゲル力覚提示装置に導入した.さらに,肩や手首等の他の関節に拡張する場合のERゲル部の配置法について検討した.具体的には次のように行った. (1) ERゲルを貼り付けた電極シートと関節の動きに合わせて動く対抗電極の組を重ね合わせ多層化することで,より大きな抵抗力が発生できることを確認した.具体的には,1枚のERゲルで2.5N程度だった抵抗力が,10枚に増やすことで23Nに向上した. (2) 身体にフィットするインナースーツに角度センサを縫い込み,ERゲルシートを含む電極シートを装着したERゲル力覚提示スーツを開発した.電場を印加することで,筋電位測定から無電場時より大きな抵抗力が発生し運動が抑制されることを確認した. (3) 特に複雑な構成と運動の仕方をする肩関節において,ERゲルと電極シートの効果的な配置を検討した.ゴムバンド等を用いた簡単な試験によって有効と確認したが,詳細は実際に衣服用のものを作成して検証する必要がある. (4) 身体に装着するとERゲルの温度が変わり,滑り特性が変わる可能性があるため,温度特性や摩耗特性を調べた.その結果,高温になるとせん断応力は低下するが,体温程度では大きな差がないことが分かった.また,初期摩耗による電極面への倣いが特性向上に大きく働くことが分かった.
|