日常の生活環境において人間が晒されている明るさ(環境光)は、実に1000億倍という広い範囲に渡る。その中で、錐体系と桿体系が同時に機能する薄明視では視覚に基づく行動パフォーマンスの低下が指摘されている。本研究では、視覚運動プライミングという錯視現象を利用した実験心理学的手法により、この低下の原因探求および補償システムに関する検討を目的とした。実験の結果、錐体系と桿体系からの情報を時空間的に統合するメカニズムの機能が不完全であるが故に、薄明視における低下が生じることがわかった。またこの低下を補償するためには、桿体系からの情報の時間遅れを補正した上で空間的な情報統合を促進させればよいことを示した。
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