研究課題/領域番号 |
24650060
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
柳田 康幸 名城大学, 理工学部, 教授 (70230266)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 触覚 / 風覚 / バーチャルリアリティ / 感覚知覚 / 風向 |
研究概要 |
本研究は風を利用した触覚,すなわち風覚提示に関する研究である.従来,風覚提示システムの設計開発を行う際の基礎となる人間の風向知覚特性は,十分に解明されていなかった.本研究では,常時露出している人間の頭部における風向知覚特性に関する知見の獲得を目指している.本年度は,本研究発案の発端となった,風の局所性による風向知覚への影響を明確化するとともに,人間の頭部に対してさまざまな方向から頭部全体に均一な風を提示可能な実験システムの構築を行った. 本研究に着手するための準備段階において大まかな風向知覚の弁別閾を測定していたが,その際,既存の多くの風覚提示システムで使用されている小型ファンを使用すると,風の局所性が風向知覚の弁別閾に影響する可能性が示唆されていた.そこで,本研究の第一段階として,直径12cmの小型ファンを使用し,さまざまな方向から風を提示する際の中心位置を鼻先,鼻の根元,頭部中心に設定した場合の各実験条件について,風向知覚の弁別閾を測定した.その結果,頭部中心へ風を向けたときに弁別閾が最も小さく,鼻先へ向けたときは最も弁別閾が大きいという結果が得られ,3条件間の統計的有意差も確認された.この結果により,風の局所性が風向知覚精度に影響していることが明確になった. 次に,頭部全体に均一な風が提示された場合の風向知覚特性を測定するための実験環境構築を行った.均一な風を提示可能な風源ユニットは,これまでの実験との整合性も考慮して,大型ファンではなく小型ファンの3×3アレイとし,頭部全体に均一な風を提示可能であることを確認した.さらに,このファンアレイを搭載して円弧状の軌道を動く実験装置の構成を検討し,機構製作業者に依頼して試作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時に曖昧ながら示唆されていた風の局所性による影響を明確化し,これに基づき均一な風を使った風覚提示のための実験装置の構成を検討し,機構を試作するなど,ほぼ計画通りに進行している.ただし,システムを構成する部品の一部を年度内に入手できなかったため,今後速やかに実験システム全体を完成させる必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
構築した実験装置を用い,均一な風に対する風向弁別特性の計測を行う.この結果を局所的な風に対する風向弁別特性と比較し,考察を加える.また,実験結果をふまえ,実験装置の改良を行う必要性が確認された場合は,装置の改良を行ってさらに精密な実験を行う.第1段階の実験で特に問題が確認されなかった場合は,風速や空気流の幅などのパラメータを制御し,より広い要因による風向知覚特性への影響を調査する.その際,必要に応じて被験者の状態を生体信号計測によりモニタリングするなどの手段により,安定したデータの取得に努める.
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の実験の結果にもよるが,必要に応じて実験装置の改良を行い,可能な限り精密な実験を遂行する.より広い要因による影響を調査する場合は,それぞれの要因を制御するための実験環境構築を行う.これらの改良もしくは構築を行う際,機構改修費用が発生する可能性があるとともに,コンピュータによる制御に関連する電気・電子部品等の購入を行う.また,得られた実験結果をまとめ,国内外の学会で成果発表を行うための旅費,学会参加費等にも研究費を使用する.
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