本年度は,共起クラスタマイニングの地震データ解析への応用を進めた.2011年の震災後の余震活動に地殻の力学関係が現れていると考え,2011年から2012年の2年間分の日本周辺の震源データを対象に地震間の共起性の解析を行った.その結果,三陸沖を中心として地理的に離れているものの,共起性が抽出された地域など興味深い共起パターンが複数得られた.さらに,共起パターン群に共通するクラスタをネットワーク化することにより,影響度の高い地域を特定した.それら高影響度地域は,震災前後ですべり量の大きい領域とも一致していること,また海溝型地震においてアスペリティ間相互作用の存在が示唆されていることから,本提案法の海溝型地震に対する一定の有用性を確認した.本結果については,人工知能学会論文誌に採録された.本提案法により,大量の震源データから帰納的にアスペリティ間の相互作用を抽出・逆推定している可能性が示唆された.地震のメカニズム解明に向けて,データ科学から新たな視点を与えるものと期待している.今後,日本周辺の地震のみならず,世界の大地震後のデータへの適用や,余震活動の周期性の解析などを行い,より確度を高める必要がある.また,共起クラスタマイニングとその燃料電池損傷データ解析および地震データ解析への応用の一連の研究は,人工知能学会誌の特集号「データ中心科学」の記事として掲載された.
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