研究課題/領域番号 |
24650069
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鷲尾 隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00192815)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 希少事象 / 希少シナリオ / 確率的シミュレーション / 知識発見 / 大規模洪水 / 河川水流モデル / 降雨確率モデル |
研究概要 |
(1)希少・特殊条件付き確率シミュレーションモデル学習及び(2)正確な確率分布の効率的シミュレーションという2つの原理の確立を目指した。また、並行してこれら原理の数値実験検証とその結果を受けた改良を重ねるた。課題(1)では、所与のデータと背景知識から対象とする希少・特殊な条件に相対的に関係がある部分を確率的に抽出し、それに基づく統計的不確定性を減らす人工的標本データ生成(一種のブートストラップ)による学習を行う原理を探求した。課題(2)では、希少・特殊な条件時に有意な頻度分布を持つ標本の中で、元の確率的シミュレーションモデルの持つ相対的分布が正確に反映されるように標本生成する原理を探求した。そして,これら原理の検証として、人工的に確率的シミュレーションを行うモデル及び希少・特殊な条件を準備し、種々のパラメータを変えて各提案原理の精度と効率に関する計算機実験評価を行った。その結果に基づいて、問題点の洗い出し、更なる精度や効率向上のための改良点の抽出を行った。 具体的には、我が国の三大暴れ川の1つである九州の筑後川の洪水を取り上げた。筑後川流域情報を収集してその水流モデルを構築し、更に過去10年間の筑後川流域の降雨データを収集して降雨確率モデルを構築した。そして、両者を結合して、大規模洪水という希少事象を誘起する降雨シナリオをREM (Replica Exchange MonteCarlo)法を使ってシミュレーション探索した。この結果、極めて希な大規模洪水を引き起こす降雨シナリオの確率分布を導出することができた。現在、シミュレーション結果の妥当性を向上させるべく、特に降雨確率モデルの改良及び他手法との性能比較評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において、初年度は(1)希少・特殊条件付き確率シミュレーションモデル学習及び(2)正確な確率分布の効率的シミュレーションという2つの原理の確立を目指すことが予定されていた。これらの項目については、当該課題を提案申請する段階が構想を練っており、その後も引き続き理論的な予備検討に取り組んだ上で、平成24年度から具体的な研究に取り組んだ。従って、当年度当初段階において、すでに一定の指針、見通しを構想できており、それをベースに順調に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は、(3)研究実績で取り組んだ2つの原理を統合し希少・特殊条件下でシミュレーションと学習を同時進行する手法の開発と(4)その実例題適用検証を実施する。(2)の原理により対象とする希少・特殊な条件下で有意な頻度の標本を正しい確率分布で効率的に生成し、そのブートストラップ標本と(1)の原理からより正確に希少・特殊な条件下での確率的シミュレーションモデルのパラメータ学習ができる。これにより、課題(3)で高い精度と効率を持つ希少または特殊な条件下での事象やシナリオ生起の条件付き確率シミュレーションモデルの学習を実現する。更に、課題(4)でDNA2重螺旋構造形成及び大津波時避難に関する仮想的な状況下での確率的シミュレーション例題を用意し、既存データと背景知識から与えられるモデルに基づいて、希少・特殊な条件下での確率的シミュレーションを実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き研究遂行に必要な資料印刷費等の消耗品費、連携研究者との打ち合わせのための国内旅費に加えて、国内外での成果発表が本格化することによる国内外旅費、論文別刷り印刷費等に使用する予定である。これらは元々の提案申請時計画に沿った内容である。
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