現在,PC,スマートフォンがオフィスや家庭で広く日常的に利用されており,そこでは電子メールの受信,電話の着信,アプリケーションソフトの更新,ソーシャルメディアからの情報など様々な「情報通知」が行われている.しかし,現状の情報通知はシステム側から一方的に行われ,通知のタイミング決定にユーザの作業状態が反映されることはない.そのため,頻繁に情報通知がユーザの作業中に割り込みをかけることによるタスク遂行の中断,再開負荷の増大がHCIにおける重要問題の一つとなっている. 本研究課題では,この問題に対して,視野ナローイング,変化盲などの人間の認知特性を有効に利用して適切な情報通知を実現する周辺認知テクノロジーPCT (Periphearal Cognition Technolgy) の枠組みを世界に先駆けて提案し,実際に視野ナローイングVFN(visual field narrowing)現象を利用したPCモニター上でのPCT実装型であるペリフェラル情報通知を構成し,実験的評価を行った.視野ナローイングとは,集中度が高いときは認識できる視野が狭まり,集中していないときはその視野が広がる認知現象である.具体的には,まずVFNの発生する領域であるVFNモデルを構築する実験を行った.そして,そこで得られたPCモニター上のVFN領域(VFNが発生する領域)に,通知アイコンを表示すだけで,ユーザの状態推定を行う必要なく,タスク処理に干渉するとき,つまりタスクに集中しているときは気にならず,タスク処理が一段落したときに自動的に情報通知に気づくメカニズムが実現できる. 実際に人型をした通知アイコンにより,ペリフェラル情報通知を実装し,より現実的な実験環境において,従来型の情報通知と比較する参加者実験を行った.その結果,様々な観点からペリフェラル情報通知の有用性が確認された.
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