研究課題/領域番号 |
24650075
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
黒岩 眞吾 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (20333510)
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研究分担者 |
堀内 靖雄 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (30272347)
市川 熹 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 名誉教授 (80241933)
菊池 英明 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70308261)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 音声学 / 話者交替 / 対話機能獲得 / プロソディ / F0モデル / 話者移行適格場 |
研究実績の概要 |
(1) 引き続き,英語対話の話者交替における重複タイミングについて母語話者と非母語話者の比較を行った。具体的には、あらかじめ発話内容を定めた台本を用いた統制的な実験手法を提案した。提案した実験手法 に基づいて、母語話者による先行発話に対して強制的に重複させる指示を与えたところ、英語能力の高い非母語話者であっても母語話者よりも重複が遅れることが明確になった。重複に際しての手掛かりについて分析したところ、発話冒頭の 非言語的(prosodic)な手掛かりが有効であることがわかった。これらのことから、母語話者は非言語的な手掛かりに基づいて話者交替を予測する能力を有しており、英語能力の訓練を充分に積んでも非母語話者はその能力を有していない可能性が示唆された。 (2) 昨年度実施したMaptask-KIDS(日本語母語,5,6歳児)のアノテーションデータを用い、話者交替時のタイミングを分析した。5歳児と成人母語話者の対話では個人差が若干存在するが、6歳児では成人母語話者との差異がなかった。5歳児の男児1名と親以外の成人との対話では、両者とも重複時間が長い例が認められたが、親近性がないための慎重な対話であり、TRPの制約は守られていた。前年度及び上記(1)の成果である、成人母語話者と非母語話者の話者交替タイミング差異の存在、母語話者におけるプロソディに話者交替の予告情報の存在、および先行研究で報告されている母語プロソディの獲得臨界期と思われる生後18ヶ月、等を総合すると、18か月までに予告機能の基盤の獲得が進み、6歳ころまでには母語の話者交替の機能が獲得されることが示唆され、モデルを提案した。また、非母語話者と母語話者の比較から、円滑な母語話者対話を実現している基本的情報は、言語的情報にはなく、物理的情報であるプロソディにあることが示唆され、本研究の仮説が概ね実証されたものと考える。
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