写実的画像生成や実世界センシングに対するニーズの高まりから,画像から実物体・実シーンの幾何学的・光学的モデルを獲得するイメージベースドモデリングの研究が活発に行われている.本研究課題では,これまであまり研究されて来なかった画像に基づく光源強度分布のモデリングに取り組む. 従来,コンピュータビジョンやコンピュータグラフィックスでは,平行光線(無限遠方光源)や点光源などの理想的な光源を仮定した画像の理解・生成の研究が行われてきた.ところが,実世界光源は,一般に,被写体から有限の距離に存在し,かつ,放射強度に指向性を有するなど,理想的な光源とは異なる性質を持つ.そこで本研究課題では,LEDや蛍光灯などの実世界光源の放射強度分布を獲得する技術を開発するとともに,獲得した放射強度分布に基づく画像の理解・生成などの応用にも取り組む. 平成25年度は,主に,LEDのような大きさの無視できる光源と蛍光灯のような一定の大きさを持つ光源の各々について,放射強度分布を獲得する技術を開発した.前者については,前年度に提案した手法をベースに,カメラの光学的校正を自動的に行う技術を開発した.具体的には,拡散反射板・半球面鏡・マーカーからなるサンプリングボードを光源の周囲で動かしながら撮影した画像を手掛かりにして,微小光源の放射強度分布,および,カメラのレスポンス関数と周辺減光関数の3つを同時に推定する手法を提案した. 後者については,液晶パネルと拡散反射板からなる装置を用いて,4次元ライトフィールドを計測する技術を開発した.具体的には,液晶パネルの透過率を計算機により動的に制御すること,ならびに,計測時間を一定に保ったままでSN比を向上させることのできる多重化センシングを用いることで,一定の大きさを持つ光源の4次元ライトフィールドを密にかつ効率的に計測する手法を提案した.
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