研究課題/領域番号 |
24650081
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
森 幹男 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70313731)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 補聴器 / 骨伝導 / インプラント |
研究概要 |
1.骨伝導に特化した補聴器回路の開発 被験者30名に対して,4か所の歯を加振したときの受聴感度を比較し,第一大臼歯では上顎の歯,中切歯では下顎の歯の受聴感度が高いことを明らかにした。また,周波数特性(利得)補正による了解性改善を試みた結果,使用者毎に異なる特性のフィルタを用いて周波数特性補正を行うことによって,単語了解度を向上できることが示唆される結果を得た。 2.体外に携帯する本体と口腔内に装着する補聴器を結ぶ無線技術の研究 体外に携帯する本体と口腔内に装着する補聴器を結ぶ無線技術として,人体通信について検討した。腕に取り付けた電極と歯に取り付けた電極との間を人体通信で無線化し,音声劣化による聞き間違いが起こらないことを実験的に確かめた。 3.骨伝導振動子のインプラント化に関する基礎的研究 皮膚を介して歯を加振した場合,皮膚による減衰量が0.25~8[kHz]の間で約10dB増大することを検知限電圧測定実験によって明らかにした。このとき,骨伝導振動子を歯へ押し当てる力をコンプレッションゲージで一定に保つが,押力による検知限電圧の変化が,皮膚を介した場合では1.4N以下になると非常に大きくなるが,歯を直接加振した場合ではほとんど変化しないことが分かった。 4.気導音と骨導音の時間分解能の比較 予定には無かったが,骨導音の音質が気導音に比べて劣る原因として,周波数特性ではなく時間分解能に着目し,骨導音の時間分解能を主観評価実験で調べた結果,骨導音の時間分解能が気導音に比べて劣ることが分かった。 5.歯音と吸着音による補聴器コントロールの検討 予定には無かったが,手が届かないインプラント型補聴器を歯音(歯のかみ合わせ音)と吸着音(舌打ち音)の骨導音を用いてコントロールすることを考え,500 Hz以下の領域の相違を特徴量として用いた結果,歯音100 %,吸着音91 %の識別率が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨伝導に特化した補聴器回路の開発においては,周波数特性を骨伝導に最適化した補聴器回路の設計・開発を目標としていた。しかし,周波数特性(利得)補正の効果が十分得られていないことから,平成24年度は増幅回路のみ試作し,周波数特性(利得)の補正についてはソフトウェアで実装して実験を行った。それ以外の実験はほぼ順調で,予定にはなかった気導音と骨導音の時間分解能の比較で新しい知見が得られたことなどを考えると,達成度としてはおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,平成24年度に得られた結果を基にして,下記のことに取り組む。 1.周波数特性を骨伝導に最適化した補聴器回路の設計・開発を行う。周波数特性(利得)補正に対する評価は,引き続き,細かくコントロールできるソフトウェアで実装して被験者10名に対して行う。 2.体外に携帯する本体と口腔内に装着する補聴器を結ぶ無線技術について引き続き詳細な実験・検討を行う。 3.骨導音の時間分解能について調べた結果については学会へ論文投稿する。また,その影響を考慮した設計によって音質向上を図れるか検討する。 4.口腔内に装着する補聴器を骨導音で操作する方法について引き続き検討し,評価実験を行う。 平成26年度は,平成24年度・平成25年度に得られた結果を基にして,周波数特性を骨伝導に最適化した補聴器回路の改良を行うと同時に試験的に実装し,被験者20名に対して主観評価実験を行う。得られた結果を取りまとめ,成果発表を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
周波数特性の最適化については,まずPC上でソフトウェアによって周波数特性(利得)を補正することでパラメーターを細かく制御し,主観評価実験を行う方向で実験を行う。そこで,コントロール用PCを5式購入する。そして,結果を反映させた形で,予定通り簡単な補聴器を試作する。そのための部品を購入する。また,得られた結果を取りまとめ,成果発表を国内で行う。さらに,学術雑誌への論文投稿も行う。そのための旅費・論文投稿費用が必要となる。
|