現在見ている状況を、人が伝達するという行為には、その状況を理解し、言語化して発声するというプロセスが含まれている。このような情報伝達のメカニズムをコンピュータで行うには、(A)現実に起こっている状況を視覚的に理解する、(B)理解した状況を言語化して音声で表現する、(C)状況の原因や今後の予測を解説として言語化し、(D)理解した状況を図や映像として再表現する、(E)状況分析の方法を実例から自動学習するといった機能も、必要である。 平成26年度は、(D)と、(C)について研究を行った。(D)の状況の映像表現では、昨年度の研究により、「ゴールキック」、「コーナーキック」、「フリーキック」、「スローイン」に関して状況認識ができているので、その状況を分かり易く再現するために、仮想的なカメラワークを付与する研究を行った。 (C)状況の解説については、状況を形成している個々の選手とボールの関係や、どの選手からどの選手にパスが渡されたか、などの情報が重要である。この情報は、「ゴールキック」などの状況認識で用いているボールの位置と速度、選手の存在位置の情報だけでは、取り出すことができない。そこで、選手とボール、選手と選手の関係、ボールの移動について、グラフ表現する研究を行った。 この挑戦的萌芽研究を通して、4台のHDカメラでサッカープレーを撮影し、選手とボールを自動抽出・追跡できるようになった。また、その結果得られた選手とボールの情報を基に、「ゴールキック」、「コーナーキック」、「フリーキック」、「スローイン」という4つの状況を、HMM(隠れマルコフモデル)で学習することにより、これらを高精度に認識できるようになった。この結果を用いて、ディジタルカメラワークや解説生成の研究を行い、ルールを自動学習する展望を得ることができた。
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