研究課題/領域番号 |
24650087
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
満倉 靖恵 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (60314845)
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研究分担者 |
神崎 晶 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50286556)
浜田 望 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (80051902)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 簡易生体計測システム / 耳鳴り |
研究概要 |
24年度はいつでもどこでも簡単に脳波を取得できることを目的とした簡易型脳波計測装置の開発を行った. まず,いつでもどこでも誰でも簡単に脳波を取得する事ができるような装置を目指し,測定箇所を一か所に限定した簡易型脳波計測装置を開発した. これらを開発するにあたり,大型脳波計測器におけるさまざまな箇所と特定の一か所との相関性を取り,聴覚野と相関性の高い脳波計測箇所を5か所に限定した.さらに5か所に絞った計測部位のうち,変数限定法を用いて脳波計測部位を減らした際に最も聴覚野の情報を効果的に取得できる部位を特定した.この結果,T4箇所およびFP1箇所の2か所が関連性が高いことを突き止めた.上記2か所はどちらも相関度が同じであったため,更なる実験を重ね,最終的に利便性を考慮してFP1箇所に特定した. 次に,簡易的に脳波を取得するためのインピーダンス計測を行い,インピーダンス特性が最も計測に適していると考えられる回路設計を試みた.回路設計は研究分担者である慶應義塾大学浜田望教授との連携により,設計指針の確認とコンパクト化について議論し,製作した. さらに,継続的な耳鳴り患者ではない被験者の耳鳴り時の脳波を取得するためには耳鳴りが起こった際にすぐに記録できる必要があるため,脳波計測器に信号入力部を組み込み,簡単なボタン指示による耳鳴り時の脳波を記録するシステムに改良した.これらによって,研究協力者である神崎医師の協力も得られ,実際の患者の耳鳴り時の脳波を簡単に大量に取得する事ができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り順調にシステムが構築できている.ただし,システム構築にあたり,ノイズなどの混入によってシステムの特性が変わり,全体のダイナミカルシステムに大きな影響を及ぼしている事が分かった.これらの対処に時間がかかったがおおむね順調である. また,当初の予定ではT4箇所からの取得であったが,これをFP1に変更できる事も分かったのは大きな発見であった.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に耳鳴り時の脳波取得システムが構築できた.今年度は脳波を媒介にした耳鳴り(聴こえている音)周波数特定システムの開発を行う. 耳鳴りとして聞こえている音は個人によって異なる.また患者として臨床現場に来た際には個人の表現で“ゴー”や“ジイジイ”など様々な表現があるが,実際の音は第3者には全く分からない.そこで,人間が知覚できる20Hz-20KHzの音を脳波で表現し,あらかじめ周波数ごとの脳波を取得しておき,データベースを作成する.これらのデータベースはこれまでの研究で約50人分の10回分(500サンプル)の平均は既に取得しているが,25年度に新たに同じ人数分を取得し,合計100名分(1000サンプル)の平均で“ある音に対する脳波”のマッチングを行う.また同時に,研究協力者である慶應病院耳鼻咽喉科の神崎晶講師の協力を仰ぎ,耳鳴り患者がいつでもどこでも簡単に耳鳴りの際の脳波を記録できるように指導していただき,データを収集する.得られたデータをパターンマッチングすることで,どの周波数の音が聞こえているのか特定するシステムを開発する. さらに,得られた周波数の逆位相を流し,耳鳴りの軽減を行うシステムを構築する. 一般に耳鳴り患者の耳鳴り軽減法として,ホワイトノイズ信号などの音刺激によってマスキングする方法がとられている.しかし,人によって聞こえている耳鳴りが異なることが問題となっている.上記耳鳴りの周波数を得る事ができれば,特定された周波数近傍で振幅・位相を可変とした様々な時間周波数成分をもつ音を生成し,マスキング効果を期待することができる.
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次年度の研究費の使用計画 |
構築したシステムを一般化するためには,さらに多くの耳鳴り患者の脳波を用いて耳鳴りがある際の脳波の一般化を行い,汎用性のあるシステムにする事が必要である.このため,被験者の謝礼や現段階で1システムであるものを5システムに増やすための費用を計上した. また,耳鳴り音のマスキングを行うための音生成装置を製作する必要がある.このために必要となる部品を計上している. 本研究テーマは斬新であり,耳鳴りの推定にはこれまでに全く用いられていない方法であるため,特許出願は勿論のこと,論文誌への投稿や国際学会での発表が不可欠であるため,費用を計上している.
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