研究課題
本研究では,発声時や歌唱時の体表面の皮膚振動パターンを計測する方法,さらには発声訓練において皮膚振動を視覚的にフィードバックする方法について検討した.まず,歌唱時の皮膚振動パターンをスキャニング型レーザードップラ振動計により計測した.この装置は,非接触で振動のパワーおよび周波数特性を測定できる上,事前に設定した複数の計測点を自動的にスキャンして面上の振動パターンを得ることができる.本研究では,裏声と地声により顔面の皮膚振動パターンが異なること,この計測法の利用においては被験者の身体の動きを抑えることが重要であること,歌声の基本周波数によって前額の皮膚振動のパワーが増加することなどを明らかにした.次に,ストロー発声を用いた発声訓練のフィードバックとして皮膚振動を利用する手法を検討した.ストロー発声とは,直径10 mm程度のストローをくわえて持続的に有声発声を繰り返す訓練方法である.この訓練方法では,多くの場合,言語聴覚士の聴覚印象に基づく指導が行われており,客観的なフィードバックの開発が期待されていた.ストロー発声では口唇部の振動を意識させることから,この部分の振動を小型の加速度ピックアップで計測し,そのパワーをリアルタイムでフィードバックするシステムを開発した.このシステムではPC画面に顔画像が表示されており,皮膚振動が強くなるに伴って計測点を中心とした円の半径が大きくなる.開発したシステムを用いて被験者10名を対象に実験を行った結果,皮膚振動のフィードバックを与えるとストロー発声のパワーが継続的に上昇し訓練効果が上がることが示された.加えて,訓練前と比較して訓練語の母音のフォルマントのパワーが上昇する傾向もあることが示された.今後,このシステムをタブレットPC等で利用できるようにして,訓練の場において簡便に利用できるようにする計画である.
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Frontiers in Psychology, section Performance Science
巻: 6 ページ: 1-8
http://dx.doi.org/10.3389/fpsyg.2015.01682
http://basil.is.konan-u.ac.jp/