研究課題
本研究は、アバター(インターネット上の自分の分身)の持つ特徴(変身、任意視点化、3D表示)を活用して、講師の容姿をアバターに実時間で表現し、複数の外国への同時遠隔講義を円滑に進めるアバターの身体表現・動作論を確立することを目的とする。具体的な研究内容として、[A]身体表現・動作の文化的要因(容姿や動作の習慣の差)による教育効果の影響度の解明、[B]高表現アバターから低表現アバター(マネキン、リンクモデル)への身体表現・動作における意識・理解度の違いの解明、および[C]背景の異なる複数国への同時遠隔教育法の実現化の検討、の研究テーマを掲げている。[A]:本年度は、韓国・東義大学、中国・中南大学および華東理工大学を訪問し、調査を行った。東義大学では、これまでの調査研究で判明している、日韓間で異なる意味となる動作を取り入れた模擬講義を実施し、聴講学生にアンケート調査および聞き取り調査を行った。その結果、意味が異なる動作が講義内容の理解に影響することを確認した。この結果を学会発表した。一方、日中間では、事前の調査で中国の大学における講義の構成や進め方に、日本の大学とは大きく異なる点があることがわかっていたため、中南大学、華東理工大学では、講義時の身体表現やアバターによる講義等関するアンケート調査を実施した。現在、アンケート調査結果の分析中であり、分析が終わり次第、公表する予定である。[B][C]:[A]の訪問調査とともに、Skypeを利用した遠隔講義(模擬講義)を、日韓間で実施した。ネットワーク環境が整っている韓国においても、映像が乱れて動作表現が伝わらないことを確認した。上記の知見から、異なる文化を持つ国家間の遠隔教育システムでは、当初の想定通り、低解像度アバターの利用が不可欠である。[A]の調査結果の分析調査をもとに、このような遠隔教育システムの検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、[A] 身体表現・動作の文化的要因による教育効果への影響度の解明のうちの[A-1] 国別の身体表現・動作、教育実施現場の調査,[A-2] 教育効果測定法の整備の深掘り、[B]高表現アバターから低表現アバターへの身体表現・動作における意識・理解度の違いのうちの[B-2] 多様なアバターの開発と整備、および[C]背景の異なる複数国への同時遠隔教育法の可能性のうちの[C-2] 異文化同時配信講義の検討を計画していた。[A]について、韓国・東義大学、中国・中南大学および華東理工大学を訪問し、調査を行った。東義大学では、これまでの調査研究で判明している、日韓間で異なる意味となる動作を取り入れた模擬講義を実施し、聴講学生にアンケート調査および聞き取り調査を行った。その結果、意味が異なる動作が講義内容の理解に影響することを確認した。この結果を学会発表した。一方、日中間では、事前に中国からの調査で中国の大学における講義の構成や進め方に、日本の大学とは大きく異なる点があることがわかっていたため、中南大学、華東理工大学の2大学の学生(各大学約100名、計約200名)を対象として、アンケート調査および聞き取り調査を実施した。アンケート調査内容には、講義の進め方や講義時の身体表現、アバターによる講義に関する違和感などを含んでいる。現在、アンケート調査結果の分析中であり、分析が終わり次第、公表する予定である。以上より、[A]に関する調査研究は、十分な成果を出していると判断するが、ベトナムや台湾など地域を広げて、さらなる調査も必要である。[B]、[C]については、[A]の調査と同時に、韓国および中国のネットワーク環境の調査や遠隔教育実験(模擬講義)やなどを実施して、異なる文化を持つ国家間の遠隔教育システムの開発に必要となる項目を調査研究し、システム要件を検討した。本年度の計画は、ほぼ消化できたと考えている。
本研究の最終年度として、これまでの調査研究で得てきた知見を利用して、異なる文化背景を持つ国別遠隔教育システムの開発を目指していきたいと考えております。このためには、文化の異なる国(中国、韓国など)への同時配信実験を実施して、身体表現・動作論の整備を図る必要があります。この同時配信実験を通して、アバターのデザインや表現方法などについてブラッシュアップしていくことが可能となります。また、ベトナム、台湾などへの調査研究を行い、さらに広い地域に対応できる遠隔同時教育の可能性を見出す。
ビデオカメラおよび大容量ストレージの購入用として、物品費を計上していたが、既に所有していたものが十分使用に耐えるものであったため、購入を見送った。物品費:なし。旅費:異文化における教示法の調査・研究旅費、遠隔同時配信実験旅費、成果発表旅費など。謝金:異文化論に関する専門家、および、外国文献の翻訳など。その他:学会参加費、製本費など
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SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration
巻: Vol. 6, No. 4 ページ: pp. 276-280
10.9746/jcmsi.6.276