研究課題/領域番号 |
24650101
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
行場 次朗 東北大学, 文学研究科, 教授 (50142899)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 感性 / 迫真性 / 日本美 / 逆理効果 / 臨場感 / 神経美学 |
研究概要 |
背景的・空間的な「場」の本物らしさに関係する臨場感はよく取り上げられるが、場面の印象にとって重要な前景的要素(対象や事象など)の本物らしさを表す感性についてはほとんど検討がなされていない。本研究では,この前景的要素の本物らしさに対応する感性を「迫真性」と定義し,臨場感は異なる時空間情報によって創出される独立した感性であることを示すことを目的とする。 まず、迫真性の概念を整備し、日本美の枯山水、侘び寂び、粋、洒脱、軽み、移ろい、はかなさ、未完の美などの特性と深い関連があり、美学的または文学的にも良く取り上げられるvraisemblanceなどの概念と共通点があることを明確にし、映像情報メディア学会誌の招待論文としてまとめた。 次に、鹿威しやシンバル演奏を例にとって、迫真性が刺激量がむしろ少なめのときに最大値を示すこと、つまり逆理効果に基づくことを感性評価実験より明らかにし、ケープタウンで開催された国際心理学会で成果発表を行った。 さらに、迫真性と臨場感評定時の脳内活動をfMRIを用いて調べ、迫真性評定時には右中後頭回における神経活動が、臨場感評定時には左下頭頂小葉の神経活動がみられ、両感性が異なった脳内基盤をもつ証拠をつかんだ。この成果は日本ヒト脳機能マッピング学会で報告された。 このように、当初の研究目的が概念整備、感性評価実験、脳機能測定の3つの観点からしだいに達成されつつあるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
迫真性の概念整備を行い、映像情報メディア学会誌の招待論文としてまとめた。 感性評価実験を行い、迫真性が刺激量がむしろ少なめのときに最大値を示すこと、つまり逆理効果に基づくことを明らかにし、国際心理学会で成果発表を行った。 迫真性と臨場感評定時の脳内活動をfMRIを用いて調べ、両感性が異なった脳内基盤をもつ証拠をつかみ、成果を日本ヒト脳機能マッピング学会で報告した。 このように、当初の研究目的が概念整備、感性評価実験、脳機能測定の3つの観点からしだいに達成されつつあり、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、迫真性に対する提示時間情報の焦点的伸張の効果などを試みる。映画技法にもあるとおり、重要なシーンをスローモーションで提示する手法が良く使われる。これは、移ろいやすい前景(figure) 情報を時間的に拡大して鑑賞し、迫真性を増強させる操作といえる。本研究では、SOA のほかに、スローモーションの速さ、その効果を使う時間窓を種々に変化させ、迫真性に及ぼす影響の感性心理学的測定を行う。 さらに、刺激強度や刺激量を減らすことにより生起する逆理的効果に伴って、実際に共感覚的感性が増大するかについても、申請者らが独自に開発した新しい感性分析手法である感覚モダリティ・ディファレンシャル法(MD法)を用いて定量的に明らかにする。 得られた知見を総合し、例えば、臨場感を高めるディバイスとの併用が可能で、また競技場や劇場などにも持ち込める小型携帯情報端末などの開発に、本研究の刺激還元や感性エッセンス抽出手法やノウハウを設計指針として提供する。クールジャパンも含め、日本美的コンテンツは3D大画面・サランド音響装置などよりは、本研究の原理を取り入れた小型・少容量携帯情報端末のほうがよりコストパフォーマンス良く、的確に表現できる期待が大きい。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述した感性実験実施補助に謝金として15万円程度を支出予定している。 得られた成果を国際あるい国内学会で発表するための旅費を25万円程度見込んでいる。 その他として、論文投稿料や学内のfMRI機器使用料として、10万円ほどの研究費支出を予定している。
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