研究課題
背景的・空間的な「場」の本物らしさに関係する臨場感はよく取り上げられるが、場面の印象にとって重要な前景的要素(対象や事象など)の本物らしさを表す感性についてはほとんど検討がなされていない。本研究では,この前景的要素の本物らしさに対応する感性を「迫真性」と定義し,臨場感は異なる時空間情報によって創出される独立した感性であることを示すことを目的とした。まず、迫真性の概念を整備し、日本美の枯山水、侘び寂び、粋、洒脱、軽み、移ろい、はかなさ、未完の美などの特性と深い関連があり、美学的または文学的にも良く取り上げられるvraisemblanceなどの概念と共通点があることを明確にした。つぎに、鹿威しやシンバル演奏、列車通過時の振動と音などを例にとって、迫真性が刺激量がむしろ少なめのときに最大値を示すこと、つまり逆理効果に基づくことを感性評価実験より明らかにした。国内外の学術誌で成果を公表し、また、日本心理学会公募シンポジウム「魅力の知覚心理学: モノ,人,空間」(2013年9月)において広く紹介を行った。さらに、迫真性と臨場感評定時の脳内活動をfMRIを用いて調べ、迫真性評定時には右中後頭回における神経活動が、臨場感評定時には左下頭頂小葉の神経活動がみられ、両感性が異なった脳内基盤をもつ証拠をつかんだ。これらの成果は、電子情報通信学会企画シンポジウム「空間感性を拡張する人間情報処理研究の最先端(一般公開)」(2014年3月)において、特に最近になって重要視されたきた空間感性との関連から公表された。このように、新たな感性概念としての迫真性の重要性が、理論整備、感性評価実験、脳機能測定、応用可能性の観点から明確化されたといえる。
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