本研究では、視覚・聴覚など多感覚にまたがるマルチメディア情報を、感覚間で相互に影響しあいながら主観的にマルチモーダルに解釈する感性認知過程を、モデル化する技術の開発を行った。 H26年度には、住宅のリビングルームを模した部屋を構築し、環境雑音などのあるもとで、照明の調節、BGMの付与により、空間の印象を、利用者が希望する快適なイメージや作業への集中度が高まるイメージに近づけるための制御機構の研究開発を行い、個人の感性的な特性に適合した制御方式の試作とその評価実験を実施した。 また、利用者の感性モデルに基づいて絞り込んだ検索結果だけでなく、利用者が感じ期待する意外性の面からも適合性を評価するアルゴリズムを開発し、許容範囲でかつ意外性も感じられるデータの検索も可能とした。利用者に身体的な負担をかけずに心理状態を計測する技術として、多様な着座姿勢・体の動きとその時の心理状態(作業への集中度など)の相関関係を調べた。その結果、個人差が認められるが、快適性や作業への集中度を高める効果のある照明光の色調・明度、BGMの曲調・テンポのあることがわかり、また、作業への集中度の指標となりうる姿勢・行動もあることがわかった。 全研究期間を通じ、(a) 個人ごとの感性的な特性を、各利用者(被験者)に少ない負担で計測・モデル化する手法、また、利用者の感性モデルへの適合度だけでなく、意外性の観点を含めた検索アルゴリズムを開発した。(b) マルチモーダルな環境の下で、照明、BGM・環境音が、利用者に与えるイメージのモデル化を進め、複合的な刺激により室内の印象をイメージに近づけられる仕組みを開発した。(c) 利用者の快適感や集中感などの感性的・心理的な状態を、被験者の行動・姿勢から推定する手法を開発した。 これにより、マルチモーダル感性認知機構の高効率なモデル化と実環境の快適化等に向けた応用の基礎を築けた。
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