研究課題/領域番号 |
24650114
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
西尾 修一 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 石黒浩特別研究室, 主任研究員 (80418532)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 身体感覚転移 / 遠隔操作 / アンドロイドロボット / BMI / 操作視点 |
研究概要 |
本年度は、1)ブレイン=マシンインタフェース(BMI)による遠隔操作時の身体感覚転移の検証および2)遠隔操作視点の影響の検証を行った。 まず1)では、人に似たアンドロイドロボットの手をBMIにより被験者に操作させ、その際の身体感覚転移の度合いを計測する実験を行った。その結果、従来の身体動作を伴う遠隔操作だけではなく、BMIによる操作においても身体感覚転移が同様に発生すること、またBMI動作の「正解率」と身体感覚転移の度合いに相関があることを明らかにした。すなわち、うまく操作できればできるほど、外部機器を自身の身体のように感じることもわかった。ラバーハンド錯覚など、これまでの類似の研究では、固有感覚や触覚への入力と、視覚フィードバックとの相関により錯覚が生じると考えられていたが、この研究により、身体を動かそうとする意図(agency)とそのフィードバックのみでも身体感覚転移が生じることを確認できた。これによって、従来の脳内の身体感覚を形成するモデルを修正し、新たなモデルを構成できる可能性がでてきた。 次に2)では、視覚フィードバックの視点の整合性が身体感覚転移に及ぼす影響を検証した。従来研究では、一人称視点、即ち偽の身体が自らのものであるかのように、整合した視点においてのみ感覚転移が生じるとされていた。今回の実験では、遠隔操作アンドロイドの操作時の視点を変更した実験を行い、結果、一人称、二人称(向かい合う視点)、鏡視点のいずれにおいても、同様に感覚転移が生じることを確認できた。しかし、有意な差は確認できなかったが、一人称と他の視点で主観評価、客観評価ともに異なる反応傾向もみられた部分もあった。身体感覚が生じる内部メカニズムの手がかりとなる可能性も有り、今後さらなる検証を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は研究計画書の予定通りに実施した。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、計画通り、a) 遠隔操作対象の見かけの影響の検証、およびb) 遠隔操作タスク種別の影響の検証を進める。 身体感覚転移現象の応用を考えた場合、人に酷似したアンドロイドにしか適用できないのでは、応用がかなり限定されてしまう。この現象がより人工物らしい見かけを持つロボットや機器にも適用できれば、危険な場所で作業するロボットの遠隔操作など、様々な応用が考えられる。そこで身体感覚の転移を人間とは異なる見かけを持つ対象の操作でも生じさせることを試みる。 また、本研究の遠隔操作による身体感覚転移は、操作と視覚の同期により発生するため、タスクの種別によって身体感覚転移の強さが変わる可能性がある。実際、これまでの予備的な試行では、運動すること 自体を目的としたタスク(運動を意識するタスク)よりも、タスクを達成するために運動が必要なタスク(運動を意識しないタスク)の方が強い効果が出る傾向が見られている。これは、従来のラバーハンド錯覚では見られない現象であるが、歩行など、日常的な行動が運動自体を意識しない方がスムー スに行えることと類似している。そこで、腕ふり、ポインティング、把持など、様々なタスクを遠隔操作により行うことで、タスクの目的指向性より身体感覚転移の度合いがどのように変化するのかを明らかにする。 これらの一部はすでにH24年度中に予備実験を開始している。また、H24年度に得られた結果も含め、論文投稿などの成果発表も引き続き進めて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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