研究課題/領域番号 |
24650116
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
池口 徹 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30222863)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク / 時間発展 / 非線形時系列解析 / 古典的多次元尺度法 / 予測 |
研究概要 |
本研究課題では,非線形時系列解析論を拡張することで,複雑ネットワークの時間発展法則を同定し,複雑現象予測へと応用するものである.ネットワークか有する性質や構造を明らかにするために,複雑ネットワークと非線形時系列を結びつけることにより,新たな側面から解析を行う枠組みが提案されている.本課題では,この枠組みを用いることで,非線形時系列予測技法を複雑ネットワークの時間発展予測に応用し,これによりネットワークの時間発展を実現する.今年度は,以下の2点について検討を行った.(1)非線形時系列を複雑ネットワークに変換する手法の性能を詳細に調査する.本課題で用いるネットワークから時系列への変換する手法のコアは古典的多次元尺度法である.そこで,ネットワークから変換された後の時系列信号の分布を算出することで,解析対象となるネットワークの特徴がどのように反映されるかを詳細に調査した.その際,スモールワールドネットワークとスケールフリーネットワークを生み出す数理モデル,現実世界に存在する実ネットワークを対象として調査した.(2)前項の調査結果に基づいて,成長する複雑ネットワークを予測する手法を提案した.具体的には,(i) 複雑ネットワークを時系列に変換し,(ii)非線形予測手法を用いて時系列を予測し,(iii)予測された時系列から複雑ネットワークを再構築することで複雑ネットワークの成長予測を実現した.数値実験により予測されたネットワークと実際に成長したネットワークを定量的に比較することで,提案手法の有効性を検証した.結果より,提案した予測手法は成長する複雑ネットワークに対して高精度な予測性能を有することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,時間発展するネットワークを対象として,その発展法則を観測されたネットワークデータのみから抽出し,それに基づいて,時間発展予測を実現する.そのための手法として,古典的多次元尺度法を用いたネットワークからの時系列データへの変換法をもちいる.当該年度においては,上記変換法を用いた場合,複雑ネットワーク(モデル,実データ)の統計的性質がどのように推定されるかを解析し,モデルを限定した場合については,その予測が可能となることをいくつかの数理モデルを用いて検証し予測が可能となることを実証したところである.次年度は予測手法を用いて実ネットワークの時間発展予測を行なえるレベルに達している.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画どおり,平成25年度は,実ネットワークの時間発展法則の抽出とそれを用いて実際に時間発展予測を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は数理モデルを対象としていたため,比較的計算量が小さい状態で対応できたが,次年度以降は大量の実データを対象とするため計算パワーの大きい計算機を購入する予定である.
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