研究課題/領域番号 |
24650116
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
池口 徹 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30222863)
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キーワード | 複雑ネットワーク / 時間発展 / 非線形時系列解析 / 古典的多次元尺度法 / 非線形予測 / 情報伝播 |
研究概要 |
本研究課題では,非線形時系列解析論を拡張することで,複雑ネットワークの時間発展法則を同定し,複雑現象の予測へと応用するものである.ネットワークが有する特徴,性質,構造を明らかにするために,複雑ネットワーク理論と非線形時系列解析論を融合させた枠組みを基礎として,従来では実現されていなかったネットワークの時間発展予測へ応用する. 今年度は,まずネットワークの有する時間発展情報を捉えるために,実ネットワークを対象としてその統計的性質を解析し,その知見に基づいて,ネットワークのモデルを構築することで時間発展則の同定と予測アルゴリズムの開発を行った.対象とした実ネットワークは,(1)電子メールネットワーク(ある大学内およびある企業内),(2)健康SNSサイトにおける情報伝播ネットワークである. その結果,電子メールネットワークにおける時間発展則では,特に返信ダイナミクスの考慮が重要で,このダイナミクス導入により,実データの特徴を再現できることを明らかにした.また,健康SNSサイトにおける情報伝播ネットワークでは,各素子がどのように情報を伝播するかにより時間ダイナミクスが異なること,これにより情報伝播による時間発展が同定できるパラメータ領域の存在を明らかにした. さらに,時系列解析論と複雑ネットワーク論を融合した基盤技法において用いる古典的多次元尺度法を用いることで,実ネットワークの分類についても検討した.これは,どのようなネットワークであれば,提案する枠組みが適用可能かを明らかにするという意味からも充用である.今年度は,いくつかの数理モデルに対して適用することでその基本性能を探った.その結果,スモールワールドネットワーク,スケールフリーネットワークなどの数理モデルを基準とすることで,実在するネットワークの分類が可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,時間発展するネットワークを対象として,その時間発展法則を観測された実データのみから抽出し,得られた知見に基づいて数理モデルを構築し,時間発展予測を実現する. 今年度は,いくつかの実データを対象として,時間発展の特徴を抽出できたこと,モデル化を行い,実データの特徴を再現できたこと,また,モデルによってどのようなパラメータであれば,実データの特徴が再現できるのかを明らかにできたことなどから,本研究課題の目的を達成するべく十分な結果を得られている.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り,平成26年度は,実データの時間発展則をさらに押し進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度までは主として数理モデルによる予測アルゴリズムの構築に主体をおき研究を実施し,徐々に実データ解析へと移行する状態であった.そのため,強力な計算機パワーは必ずしも求められず,むしろ,モデル構築のための議論を学会参加により遂行する必要があった.そのため平成26年度に繰り越すことになった. 本研究課題の主要なターゲットである実ネットワークの予測を行うために,強力な計算機パワーが必要となる.そのためにApple製 Mac Pro を購入する予定である.
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