研究実績の概要 |
本研究課題では,非線形時系列解析論を拡張することにより,複雑ネットワークの時間発展法則を同定し,複雑現象予測へと応用する.ネットトワークか有する性質や構造を明らかにするために,複雑ネットワークと非線形時系列を結びつけることにより,新たな側面から解析を行う枠組みが提案されている.本課題では,この枠組みを用いることで非線形時系列予測技法を複雑ネットワークの構造がどのように時間発展するか,その特徴を定量的に解析した.(i)非線形時系列を複雑ネットワークに変換する手法の特徴について,解析的な検討を行った.具体的には,本課題で用いる技法の中心となる多次元尺度法を用いた場合に,どのような特徴が現れるのかを検討した.その際,ネットワークから変換された後の時系列信号の分布を解析的に算出することを検討すること,解析対象となるネットワー クの特徴がどのように時系列信号の特徴として出現するのかを求めた.(ii) 第一の調査結果に基づいて時間発展するネットワークを予測する手法を提案した.具体的には,(A) 複雑ネットワークを時系列に変換し,(B)非線形予測手法を用いて時系列を予測し, (C)予測された時系列から複雑ネットワークを再構築することで,複雑ネットワークの成長予測を実現した.数値実験により予測されたネットワークと実際に成長したネットワークを定量的に比較することで,提案手法の有効性を検証した.さらに,これらの結果を種々の実ネットワークを対象として解析をおこなった.具体的には,コンタクトパターンより作成したネットワーク,(数理モデル上での)ニューラルネットワークでの学習により生成されたネットワーク,言語より作成したネットワークを対象として解析した結果,種々の特徴を明らかにすることに成功した.
|