研究課題/領域番号 |
24650117
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池上 高志 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (10211715)
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研究分担者 |
廣瀬 通孝 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (40156716)
岡 瑞起 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 助教 (10512105)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | センサーネットワーク / アフォーダンス / 力学系 / カオス / 人工生命 |
研究概要 |
本プロジェクトの提案は、仮想/拡張現実のシステムを使って、人間の認知上に再構成される時間と空間の多様性に関する理論的基盤つくりを目指すものである。仮想/拡張現実のシステムは、人工生命の基本概念である自律性」「能動性」「持続性」「進化可能性」を用いて、理論的基盤を構成する。特に大空間や屋外空間において、空間的対応付けの正しい五感情報提示を実現する。H24年は特に以下のシステムについて推進できた。 時間と空間の多様性は、そのままその場所でつくられるアフォーダンスである。われわれは8つのセンサーユニット(2つのセンサーをそれぞれ備え、それをXbeeと、multicore unitと、メモリーボードからなる)を自作し、それらが無線でネットワークをなすシステムを構成した。それを研究室と青山の本屋に配置させてもらって、1週間以上放置し、置かれた場所に依存してどのようなダイナミクスが出現するかを実験した。その結果、以下のものが分かった。 1) センサーネットワークは、各センサーユニットのサンプリングレートが自律的に可変的であるように設計した。それが光の強さに伴って分岐現象を示し、それが研究室環境における週の何日かの日中に観察できた。2) 1)を力学系のモデルとして構築して解析。複雑な分岐過程と、ある種の共鳴状態を明らかにすることができた。このセンサーネットワークの状態をサウンドにマップし、その部屋に来た人とセンサーネットワークが相互作用できるようにデザインした。この実験システムをスケールアップして、H25年度は他センサーを用いた人の知覚について考察をおこなっていきたい。この結果は、2012年のSIGRAPH-ASIA、およびIEEEのALIFE国際会議にオーラル講演として採択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つの国際会議での発表があり、そのことから順調に発展しているといえる。一つ目はSIGGRAPH ASIA2012に採択されたので構築したセンサーネットワークのデモンストレーションを行い、2つ目はIEEE-ALIFEにオーラルで採択されている。実際にセンサーネットワークが制作されていること、2つの国際会議で採択されたことより、順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
バーチャルタイムマシン・システムのための理論構築を行う。 考慮しているシステムは、現実世界に置くことで固有の時間スケールを必要とする。例えば長い時間スケールでパブリックスペースに設置した場合に,人が長く相互作用できるための仕組みを明らかにする。これは、廣瀬研究室がおこなってきた大量実写画像を用いたバーチャルタイムマシンの制作設計のために必要な理論である。池上は、人工システムがそれ自身で組織化する時間スケールの理論を作っている。これを廣瀬研究室のデータをもとに発展させる。自律システムが人間や環境に働きかけるためには、空間性と時間軸を考慮した相応のインタラクションの仕組みが必要となる。また、ハーフパブリックな空間で長期にわたって稼働するシステムを構築するために、ディスプレイシステムやインタラクション手法自体にロバストな仕組みを導入する必要がある。具体的には、以下の3 つの課題(をベースに人工生命の手法を用いた理論設計に取り組む。 具体的には、無意識型インタラクションシステムの自律的なダイナミクスを人間に反映させるフィードバック手法として、直接的な情報提示手法でなく 、人間の無意識の作用を利用して、人工生命システムが間接的に人間に働きかけるための手法の研究を行う。例えば、アンビエントな情報提示手法、人間の備える無意識の反射行動を用いた行動誘導システムなどの理論を構築する。人間のもつ主観的な時間の流れを、静的な情報環境が解読して情報を提示するという従来のパラダイムを脱却し、本提案で狙いとしている、人間と人工生命が共進化して構成する空間というものを実現するための手法を構築する。より具体的には、廣瀬研究室で開発している以下の試みに対し、自律的な時間/空間情報の記憶の書き換えや維持、という点に着目し理論化を行ってゆく。たとえば、以下のような廣瀬研の仕事のデータを扱ってゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
センサーネットワークを改良して、新しいデバイスのネットワークを構築する。現在のものはマルチコアCPUを搭載し、ジグビーを用いて通信している。このシステムを簡単化してセンサーに特化する。この作業を博士課程の学生(丸山くん)に謝金を出して協力してもらう。また、共同研究者の岡瑞起、廣瀬道孝の両氏とブレインストームの研究会を行う。これらのことにメインに研究費を使用する。また、成果をオープンアクセス系のジャーナル(多分PLOSジャーナル)に投稿する投稿料として、使用する予定である。
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