本研究では、非直交性の非構造化データに対して、量子エンタングルメントと量子重ね合わせ状態を利用して高速に認識を行う量子物体認識アルゴリズムについて、大規模な画像群での認識能力を評価することを目的とする。量子物体認識アルゴリズムでは、画像データから自動的に特徴を抽出するために、SURF(Speeded Up Robust Features)とk-means法を導入した。大規模画像群として、アルファベット、ギリシャ文字、ひらがな、カタカナなど合計1001枚の画像を用意した。1001枚の画像の内訳は、91種類の文字画像の大きさを0.67倍から0.97倍まで11通りに変化させたものである。SURFとk-meansによる自動特徴抽出アルゴリズムにより1001枚の画像に対して、4つずつの特徴画像を抽出した。その結果、認識すべき対象の観測確率の平均値は0.92となり、高い認識能力を有することを確認した。このとき、位相限定フィルタとして認識能力を向上させている。また、特徴数を増やすことと特徴領域を大きくすることで検出確率を向上させることができることも分かった。大規模データベースにおける量子物体認識アルゴリズムの性能評価を行うために、GPGPUを用いて認識処理の高速化を図った。GPGPUとしてNVIDIA Tesla C2075を用いた。量子物体認識アルゴリズムで計算の主となる相関演算に最大4個のGPGPUを適用させた。20000回の相関演算を実行したときの相関演算に要する時間は1.1秒であるが、GPGPUからCPUへのデータ転送が約2.1秒かかることが分かった。また、4個のGPGPUを用いることで1個のGPGPUを用いた場合よりも最大1.4倍の高速化を達成した。将来的に10000画像以上の大規模データ画像に対して性能評価が可能なツールの構築に成功した。
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