研究課題/領域番号 |
24650120
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
山口 明宏 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (60281789)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スパイク応答モデル(SRM) / カオス同期 / 情報コーディング / セグメンテーション |
研究概要 |
平成24年度は,カオス的スパイク応答を示す神経細胞モデルの構築,および,一方向結合系におけるカオス同期の解析を行った.カオス的スパイク応答を示す神経細胞モデルの構築においては,W. Gerstner等によって提案されたスパイクレスポンスモデル(SRM)を用いてニューロンモデルを記述し,ニューロンに正弦波の背景振動が加えられていると仮定して,スパイク発火後の内部状態の初期値を背景振動の値で決定するように拡張した.この拡張されたSRMは,背景振動の振幅に応じて多様なスパイク系列を発生させることが可能であり,スパイク発火時刻の時間間隔の写像を解析することで発生された系列がカオス性を有していることを示した.具体的には,スパイク発火時刻の時間間隔の写像を解析的に導出し,カオス的応答を示す領域で写像のLyapunov指数が正になることを示した. 次に構築した神経細胞モデルを一方向に2体結合したモデルについて,カオス同期の解析を行い,カオス性を保持しまま同期が可能であることを示した.ここで,入力に対する応答を記述するカーネル関数について,応答のパルス幅が狭いほど同期の度合いが高くなる傾向がみられた.また,情報コーディングの観点からのカオス同期の解析として,神経細胞の入力ダイナミクスに対する選択応答特性に着目し,カオス応答を示す場合と周期応答を示す場合の選択応答特性を比較した.結果として,カオス性を示す場合のほうが入力ダイナミクスの違いに敏感に反応する傾向が見られた.カーネル関数の形状の違いによる応答特性の違いの解析,1次元結合系や2次元結合系への拡張が次の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,平成24年度中にカオス的スパイク応答を示す神経細胞モデルの1次元結合系におけるカオス同期の解析までを行う予定であったが,神経細胞モデルの構築に予定以上に時間を要したため,本年度は1次元結合系解析の基礎として一方向2体結合系のカオス同期解析までを行った.1次元結合系のモデル構築とカオス同期の解析については,平成24年度,平成25年度で行う計画であっため,平成25年度も継続して研究を行う.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って1次元結合モデルの構築とそのカオス同期の解析,および,複数の異なるスパイク同期集団の共存条件と力学構造との関係性の解析を行う.ここでは,複数の局所入力毎に異なるカオス的スパイク同期集団を形成し,それらが共存するための条件を解析する.また,1次元スパイク結合格子モデルの2次元結合格子モデルへの拡張も合わせて行う. 更により現実的な問題でのカオス的スパイク同期集団の応用可能性を検討するために2次元画像のセグメンテーションを行うための2次元結合格子モデルを構築する.具体的には,2次元スパイク結合格子モデルに2次元画像を入力し,スポットや線分,エッジといった画像の構成要素に選択的に応答するシステムを作成する.ここでスパイク系列のカオス同期を用いた情報コーディングとして,画像中の各構成要素に対する神経細胞の選択応答が,構成要素が属するオブジェクト毎にスパイク応答の同期集団を生成することで,画像中の構成要素をセグメント化するモデルの構築を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,当初予定していた実験補助のための謝金を使用しなかったため,旅費の残額とあわせて60,950円の残額が生じた.残額については,平成25年度分とあわせて実験補助のための謝金および画像処理用計算機の費用の一部として効果的に使用する.
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