研究課題/領域番号 |
24650120
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
山口 明宏 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (60281789)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ニューラルコーディング / カオス同期 / スパイク応答モデル(SRM) / セグメンテーション / バインディング問題 / GPGPU |
研究実績の概要 |
平成26年度は,カオス的スパイク応答を示す神経細胞モデルの2次元結合系について,2次元入力画像のカオス同期を用いたセグメント化の解析,および, GPGPUを用いたシミュレーションの高速化を行った. カオス同期を用いたセグメント化の解析として,単純なグラデーションパターンやモザイク状のブロックパターンを画像入力としてスパイク応答のシミュレーションを行い,生成されたスパイク時系列について各神経細胞間の相互相関の解析を行った.結果として,グレースケールの入力値に対して,入力値が近い隣接した神経細胞同士は同期発火する傾向がみられ,類似した入力値をもつ隣接領域でスパイク応答の相互相関が高くなり入力画像をセグメント化が可能であることを数値実験で示した.更に空間的に離れた類似した入力値をもつ複数の領域に対する応答を解析した結果,カオス的応答を示す場合には隣接した領域でのみ高い相関を持ち,空間的に離れた領域では同一の入力値であっても相関が低くなることで,これらの領域を識別できることを示した. GPGPUを用いた高速化については,これまでの結合モデルでは,スパイク発火タイミングの神経細胞間の相互依存性がボトルネックとなり,高速化が困難という問題が生じた.これを解決するために,神経細胞間のシナプス結合に時間遅れを導入した結合モデルを構築した.時間遅れを導入することでシミュレーションの単一計算ステップ内では相互依存を考慮する必要がなくなりGPGPUを用いた高速化が可能となった.これまでのモデルとの比較のため時間遅れに依存した応答のダイナミクスの変化を解析した.結果として時間遅れの導入によって系のダイナミクスは変化するが,時間遅れが短い場合,時間遅れが無い場合とほぼ同等の応答を示すことを数値実験で示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では,平成26年度までに実画像のセグメンテーションへの応用を行う予定であったが,前年度までの遅れの影響とGPGPUを用いた高速化で生じた問題点の解決のために時間を要したことから,当初予定していた研究を完了することができなかった.本年度までに,グラデーションパターンやモザイク状のブロックパターンなど基本的な入力画像に対するセグメント化の解析を行い,GPGPUを用いた高速化の目途もついたことから,平成27年度に実画像のセグメンテーションへの応用の課題に取り組む予定である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに,スパイク応答型神経細胞モデルの2次元結合系について,画像入力に対するスパイク応答の相関を解析するシステムを構築し,GPGPUで高速化を行うための結合モデルの拡張を行った.平成27年度は,これらのシステムを用いて実画像のセグメンテーションへの応用を行う.具体的には,基本的な物体の画像や人物の顔画像などの実画像に対する2次元結合系のスパイク応答について各神経細胞間のスパイク応答の相互相関を解析する.カオス的スパイク応答を示す場合と周期的スパイク応答を示す場合について,相関解析の結果を比較することで,カオス同期を用いたセグメンテーションの特徴を解析する. 最終的には,スパイク系列のカオス同期を用いた情報コーディングとして,画像中の構成要素に対する神経細胞の応答が同期集団を生成することで画像中の構成要素をセグメント化するモデルを構築することを目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,スパイク応答型神経細胞の2次元結合系の高速化と実画像のセグメンテーションへの応用を計画していたが,これまでの結合モデルではGPGPUを用いた高速化が困難であることが判明した.前年度までの遅れの影響と高速化で生じた問題点の解決のために時間を要したことから研究の進捗が遅れ当初予定していた学会発表ができなかったため,研究成果の発表予算に次年度使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度については,高速化した2次元結合系について実画像に対する応答の解析を行う予定であり,解析した結果を国内学会や国際会議等で発表することを計画している.これらの成果発表のために予算の次年度使用額を使用する予定である.
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