研究課題/領域番号 |
24650131
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
針生 悦子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70276004)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表情 / 乳児 / 感情理解 / 行動予測 |
研究概要 |
大人は、他者の表情から、その人の現在の快、不快ばかりでなく、その人がその表情を向けた対象にどのような感情を抱いているか、その対象に対して以後どのようにふるまうか、ということまでを読み取る。ところが、このような表情利用能力の始まりをとらえようとする研究は、これまでのところ、子どもはいつから異なる表情を視覚的なパタンとして識別できるのか、カテゴリー知覚できるのか、といった問題への答えを探るところで足踏みしてきた。そこで本研究課題では、乳児を対象に実験を行うことにより、まず、①乳児が(ただ単に同一人物の中で表情が変化したことに気づくというのではなく)異なる人物の示す同種の表情を同じと見なし、ほかの表情とは区別することができるようになるのはいつからか、②それぞれの表情に応じた反応を示すようになるのはいつごろからか、を押さえた上で、③表情を表情表出者に対する初歩的な人物評価(好き嫌い)の手がかりとできるようになるのはいつか、④表情をその表情表出者の行動を予測する際の手がかりとして使えるようになるのはいつからか、⑤表情表出者にそのような表情(感情)を引き起こす事態に対する理解(すなわち表情=感情の原因についての理解)を子どもが示すようになるのはいつごろか、といった問題について検討していく。 このうち本年度は、①と②の問題の解明に取り組み、生後4か月の時点で子どもは既に、笑顔(happy face)と怒り顔(angry face)をカテゴリーとして区別している(異なる表出者の同じ表情を同じと見なす)こと、ただし、4か月時点では子どもはこれら異なる表情に対してそれぞれに応じた異なる反応を示すことはあまりないが、6か月ころになると、まず怒り顔に対してネガティブな反応を多く表出するようになる、といったかたちで、表情の示す感情的意味についての理解を示すようになること、を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の課題は、乳児における表情の因果的理解について検討していくための大前提となる、「そもそも子どもはいつごろから表情の違いを知覚的に区別し、またその意味の違いに応じた反応を示すようになるのか」について、一定の知見を得ることであった。その目標はほぼ達成された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、①乳児が異なる人物の示す同種の表情を同じと見なし、ほかの表情とは区別する、といったことができるようになるのはいつからか、②それぞれの表情に応じて異なる反応を示すようになるのはいつごろからか、という問題について一定の知見を得ることができた。そこで今後はこれを論文にまとめ、公表していく。さらに、その知見を足掛かりに、③表情を表情表出者に対する初歩的な人物評価(好き嫌い)の手がかりとできるようになるのはいつか、④表情をその表情表出者の行動を予測する際の手がかりとして使えるようになるのはいつからか、⑤表情表出者にそのような表情(感情)を引き起こしうる事態に対する理解(すなわち表情=感情の原因についての理解)を子どもが示すようになるのはいつごろか といった問題を明らかにするための、実験方法の開発に取り組み、本実験を実施、知見をえていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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