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2012 年度 実施状況報告書

大型類人猿における情動喚起とその社会的影響-赤外線サーモグラフィによる研究

研究課題

研究課題/領域番号 24650134
研究機関京都大学

研究代表者

平田 聡  京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80396225)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード実験心理学 / 感情科学
研究概要

大型類人猿における情動とその社会的影響を客観的に評価するため、赤外線サーモグラフィで顔表面温度を測定した。情動喚起に伴う自律神経系の働きにより体表面の血流が変化し、それによって体表面温度が変わるという原理に基づくものであり、これを赤外線サーモグラフィでとらえようという試みである。「心」の進化的基盤を探ることを目指した多様な動物種比較研究が展開されているが、ヒトに近縁な大型類人猿の研究ではこれまでもっぱら「知」の側面を扱い、「情」の側面に焦点が当たるのは稀であった。赤外線サーモグラフィを使った同様の研究が、ヒトやヒト以外の動物を対象としておこなわれた報告はあるが、大型類人猿を対象とした研究はこれまで全くなかった。本研究が初の試みである。本研究において、まずは測定方法の確立をおこなった。機械の特性や実験環境に応じてキャリブレーションをおこない、可能な限り正確にチンパンジーの体表面温度を測定する条件を探った。これによって、最適と考えられる測定方法を見出すことができた。次に、研究実施計画にある通りの条件で、チンパンジーを対象に実際の測定をおこなった。つまり、様々なビデオ映像をモニターに提示し、これをチンパンジーが見ている際の顔表面温度を赤外線サーモグラフィで測定した。提示するビデオ映像として、被験体にとって既知の個体や未知の個体が、攻撃的な行動をおこなう場面や中立的な場面などを用いた。その結果、攻撃的な行動のビデオ映像を見た場合に、顔表面温度が有意に上昇することが確認された。これによって、類人猿の情動を顔表面温度測定によって評価するという本挑戦萌芽研究の妥当性が確かめられたといえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

赤外線サーモグラフィを用いた体表面温度の測定は、ヒト以外の霊長類を対象としては過去にほとんどおこなわれておらず、こと類人猿に限っては前例が皆無であったが、この研究によって初めてチンパンジーを対象とした測定に成功した。また、情動を喚起すると想定される条件で測定した結果、実際に顔表面温度が上昇しているのを捉えることができた。よって、本研究計画の妥当性を示すことができたと言える。平成24年度はチンパンジーを対象にして最適な実験手法を確立することを主要な目標に掲げており、この目標は十分に達成することができた。

今後の研究の推進方策

すでに実験手法は確立することができたので、それに基づいて継続的にデータ収集をおこなう。ビデオ映像を提示して被験体の顔表面温度を測定すること自体は、一度このように方法が確立されれば比較的容易に繰り返し実施することができる。今後のポイントは、多様なビデオ映像を準備することである。被験体にとって既知の個体、未知の個体、既知の個体の中でも親しい個体とそうでない個体といった具合に、被験体との関係を考慮して多様なバリエーションのビデオ映像を用意する必要がある。ビデオ映像を収集することに時間を費やし、多様な条件設定が可能になるように工夫したい。また、チンパンジーとの比較のため、ボノボとオランウータンでもデータ収集をおこなう。この際の実験方法はチンパンジーのものに倣う。得られた成果を学会や学術誌等で発表する。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Brain response to affective pictures in the chimpanzee2013

    • 著者名/発表者名
      Hirata, S., Matsuda, G., Ueno, A., Fukushima, H., Fuwa, K., Sugama, K., Kusunoki, K., Hiraki, K., Tomonaga, M., Hasegawa, T.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 3 ページ: 1342

    • DOI

      10.1038/srep01342

  • [雑誌論文] チンパンジーの情動研究2012

    • 著者名/発表者名
      平田聡
    • 雑誌名

      発達

      巻: 132 ページ: 93-101

  • [学会発表] Measurement of event-related potentials in an awake chimpanzee for investigating chimpanzee brain characteristics

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Hirata
    • 学会等名
      IIAS Research Conference 2012 “Evolutionary Origins of Human Mind
    • 発表場所
      京都(国際高等研究所)

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公開日: 2014-07-24  

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