研究課題
精神集中の主観的指標を探るため、当初計画に沿って、視覚探索課題の中でも試行間の課題難易度の変動が小さいことが知られている特徴探索課題を多数回行い、その反応時間の時系列的変動を調べる実験を実施した。100試行のブロックごとにブロックでの主観的集中度評定を行い、集中度評定と視覚探索の成績の関係を見ると、集中度と正答率、反応時間の標準偏差の間に関連が見られた。具体的には、集中度評定が高いほど正答率が高く、反応時間の標準偏差が小さくなったが、反応時間の標準偏差については、誤答試行を除去すると関連は消失することから、正答率の効果の副作用である可能性が示唆された。全体として、反応時間の平均、分散などの要約統計量と主観的集中度の間の関連は弱く、別の解析手法の開発が望まれる。このため、反応時間の時系列に含まれる時間相関に着目して解析を行った。具体的には、反応時間の試行間変動を時系列データとして扱い、これをフーリエ変換して周波数空間に変換する。反応時間の試行間変動が時間的に独立であれば、パワースペクトルはホワイトノイズ、即ち周波数に関係なく一定となるが、先行研究で示されているように今回のデータでも時間的に独立ではなく、時間相関を持つことが示された。また、パワーと周波数の関係を見ることで時間相関の長期記憶性も評価できるが、今回のデータからは時系列の長期記憶性を示す一貫した傾向を見出すことはできなかった。この解析は反応時間時系列を全体としてフーリエ変換するために集中度評定データとの関連を検討できないという限界がある。この問題を克服するためには、最近提案されているマルチフラクタルを用いた時系列データの解析手法を用いる必要がある。この解析を適用し、反応時間時系列の時間相関の強さの時間変動を求め、主観的集中度との関連を検討することが今後の課題である。
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10.3758/s13414-013-0486-1.
http://www.cv.jinkan.kyoto-u.ac.jp/