研究課題/領域番号 |
24650136
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高田 明 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70378826)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 社会性 / 大型類人猿 / 比較認知科学 / 相互行為 |
研究概要 |
本研究では,飼育下および野生の環境下におけるチンパンジーとヒトとの相互行為を分析し,両者の行動が時間的にどのように組織化されているのかを解明する.とくに身ぶり,物,音声という3種類の記号論的資源に注目して,チンパンジーとヒトがこれらを用いて相互に行動を調整し,相互行為的な能力を構成するプロセスを明らかにする. プロジェクトの初年度となる平成24年度は,4~5月,7月,12月に研究代表者の高田と連携研究者の伊藤が(株)林原生物化学研究所類人猿研究センター(GARI)を訪問し,チンパンジーとヒトの相互行為場面の動画資料を収集した.また4~5月の調査では,GARIでの調査のあとに上記2名および連携研究者の田代と座馬が熊本サンクチュアリを訪問して,飼育下のチンパンジーとヒトの飼育者や研究者との相互行為に関する調査を行った.これまでに得られた動画資料を用い,とくに身ぶり,物,音声という3種類の記号論的資源に注目して,相互行為が時間的にどのように組織化されているかに関する分析を行った.またGARIおよび熊本サンクチュアリを訪問した際,さらに2月には京都大学においてデータセッションを行い,上記の分析の妥当性を検討した.平成24年度はとくにヒト-チンパンジー間相互行為における身ぶりの利用に焦点をあて,組織的な分析を行った.本報告書に記したように,これらの研究の成果は各種学会等での発表に加え,論文として公表した.また,本プロジェクト独自のHPを作成し,プロジェクトの進行や成果を随時公開するための準備を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,当初の予定に沿ってのべ6回に渡り研究代表者(高田)と連携研究者(伊藤)がGARIを訪問した.GARIでは,連携研究者(田代,座馬)の協力のもと,チンパンジーとヒトの相互行為場面の動画資料を収集した.また4~5月には,研究代表者と連携代表者が熊本サンクチュアリを訪問して調査を行うとともに,今後の調査協力体制について議論を行った.これまでに得られた動画資料の解析は,ほぼ当初の予定通りに進んでいる.また研究の成果は,各種学会等での発表や論文を通じて公表したことに加え,本プロジェクト独自のHPを通じた公開の準備を進めている.したがって,本年度の目標として据えた課題はおおむね達成しえた.
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトの採択にあたっては,交付額が当初の申請額より39%程度減額されたが,既存の研究機材を活用したり,研究補助員に依頼する予定にしていた作業を研究代表者や連携研究者が直接行ったりして研究費の節約に努めている.その結果,平成24年度はプロジェクトの基本方針を変えることなく,目標として据えた課題をおおむね達成することができた.平成25年度も引き続き,申請書に記した計画・方法に沿ってプロジェクトの運営を進める.ただし,平成25年度と平成26年度の2回行うことを予定していたマハレ山塊国立公園での現地調査は,予算の制約から平成26年度の1回とする.またGARIは資金難等から平成25年3月に閉鎖したが,GARIのチンパンジーはすべて熊本サンクチュアリに移管された.これを受けて,本プロジェクトでも熊本サンクチュアリでの活動を強化する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,研究代表者もしくは連携研究者が熊本サンクチュアリを訪問し,形態計測場面および食餌場面でのヒト-チンパンジー間相互行為の動画資料の収集・解析を行う.得られた動画資料およびこれまでに得られている動画資料を用いて,身ぶり,物,音声の利用に注目しながら,(1)観察時間を30秒間隔で区切り,注目する行動・状態について1-0サンプリングを用いてコード化する.またとくに注目すべき相互行為場面では,身ぶりや会話を分析するためのソフトウェアであるELANを用いて動画資料を取り込み,(2)背景から身ぶりを切り抜いた静止画像,(3)チンパンジーが扱っている物の静止画像,(4)チンパンジーおよびヒトの音声の波形,(5)ヒトとチンパンジーの会話の書き起こしを作成し,これらを関連づけながら,相互行為が時間的にどのように組織化されているかを分析する.これらの分析では,研究補助員を雇用して補助的な作業を担当させる. また,上記の相互行為分析の結果を受けて,チンパンジーの特徴的な相互行為パターンが生じる仕組みを明らかにするため,とくに食餌場面に注目した実験的観察を国内で行うことを検討する(実験の詳細は,相互行為分析の結果を受けてさらに検討を進める). 平成24年度と同じく,熊本サンクチュアリを訪問した際,および京都大学においてデータセッションを行い,分析の妥当性を検討する.とくに,平成25年度はヒト-チンパンジー間相互行為における物の利用に焦点をあてて組織的な分析を行う.その成果をまとめて,日本霊長類学会等の研究集会で発表するとともに各種の学術雑誌に論文を投稿する.
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