本研究課題ではフォルマント抑圧刺激を用いた知覚実験により、音声から話者の個人性を知覚する認知科学的メカニズムの解明を目指した。様々な年齢と性別の成人話者300名が発話した母音の音響分析を行い、話者知覚に関してスペクトル全体形状に基づく特徴量が既知のフォルマント周波数と同等以上の情報量を持つことを明らかにした。またフォルマント抑圧実験を用いた母音の知覚実験から、少なくとも声道長と基本周波数が個人性知覚において重要な手掛かりであることを示した。しかし実験結果から得られた知覚特性は聴者により大きく異なっており、すべての被験者の知覚特性を説明できる一般的な知覚モデルを構築することはできなかった。
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