研究課題/領域番号 |
24650138
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
豊村 暁 東京電機大学, 情報環境学部, 助教 (90421990)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 発話運動制御 / 聴覚フィードバック / 流暢・非流暢 / 脳計測 / 身体運動 / 下肢運動 |
研究概要 |
基礎となる流暢・非流暢発話の神経メカニズムを調べる目的で,発話中の聴覚フィードバックに着目した.聴覚フィードバックは自己の発声音声をモニターし制御する機能で,流暢に話す際には不可欠な機能として知られており,聴覚フィードバックを人工的に変換すると,通常話者でも非流暢な発話が出現する.本研究では声のラウドネスに着目し,持続発声中の声のラウドネスを数百ミリ秒の間,数dB変化させてフィードバックする実験をデザインした.現在まで,ラウドネスを一定時間幅だけ上下させる手法と,同時にトリガを出し,脳計測装置等へ送る手法を確立した.行動実験を遂行したところ,変換に対して被験者の声が揺らぐことが観察されたが,その補償方向については一定しないことも多く,引き続き検討したい.脳の活動に関しては,MEGとfMRIを用いて数名を対象とした予備実験を行った.結果については現在検討中である.この他,ターゲット追跡における変換聴覚フィードバック条件下への適応に関する実験を行った. また,発話運動制御と比較する目的で下肢運動にも着目し,発声と下肢運動の二つのタスクに対する脳活動を比較することで,運動制御機構をより理解するための研究の準備を行った.身体運動と発話は密接に関わっており,例えば吃音を有する非流暢な話者が下肢を動かしながら発話すると流暢に話せることが知られている.これは身体運動のある種のリズムが中枢を通じて発話器官の流暢なリズム生成に関与している可能性がある.先行研究では発話に対して手指の運動を比較対象として議論されることが多いが,下肢運動はこれまであまり着目されてこなかった.本研究では下肢運動に着目し,非磁性の材料を用いてMRI内で疑似歩行運動を行うシステムの開発を進めた.歩行に近い状態でタスクを行えるシステムまでにはまだ改良が必要であるが,最初のステップとして研究をスタートした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変換聴覚フィードバックを用いた研究に関しては,ラウドネスを変換させるタイミングの制御や,変換タイミングと同時にトリガーを発生させるシステムの構築に多くの時間を費やした.複数の被験者に対して予備実験を遂行した.実際に本実験として被験者を増やしながら進めるところまでは到達していないが,システムの調整や実験条件・パラメータの多少の変更で反応が変わるため,一定した結果を得るまでにはもう少し試行錯誤が必要である.しかし,難しい実験の第一歩は到達できたと考えられる. また,発話と比較する目的で,下肢運動に着目した研究を進めた.初年度は疑似歩行タスクをMRI装置内で行うための装置の開発に時間をかけた.非磁性の材料を用いていかにして歩行に近い感覚で運動出来る状態を作れるか,が課題であった.試行錯誤ののち,試作機第1号が完成した.しかし,上下スライド運動時に足全体へ負荷がかかり,歩行に近い感覚というところまでは到達しておらず,今後の改良が必要である.
|
今後の研究の推進方策 |
まずは現在進めている研究を引き続き継続していきたいと考えている.変換聴覚フィードバックに関しては,実験条件やパラメータを調整しながら,最適な実験状況を探索する.同時に複数の被験者に対して実験を繰り返して調整したい.脳計測に関しては,発声中のMEG計測時のアーチファクトへの対応等の課題が残っている.変換聴覚フィードバックの無い,単純な発声時の脳活動も調べたいと考えている.下肢運動に関する研究では,MRI内で疑似歩行タスクを行うシステムの開発が課題として残っている.これまでの試作機では,上下スライド運動時に,スライダーを上げる力が必要で余計な負荷がかかってしまうという問題がある.より歩行に近い感覚を得るためには,この点を改良する必要がある.引き続き検討していきたい.
|
次年度の研究費の使用計画 |
発声実験に必要な音響機材や消耗品などを想定している.必要であれば研究補助員の雇用や被験者代も支出する.下肢運動の研究については脳計測装置内で歩行に近い感覚で運動出来る装置の開発を進めるため,開発のための道具・機材の購入と,開発作業を補助する研究補助員の雇用に充てたい.研究成果の学会発表や共同研究者との打ち合わせ等のための旅費を支出する.25年4月に大学を異動したため,既存の装置等の環境が異なった.従って,本研究を遂行するための機材の整備が必要と考えられる.学内の機材についてまだ調べきれていないが,今後研究推進に購入が必要なものを調査して整備したい.
|