研究概要 |
睡眠は様々な学習を促進するが,感覚間統合学習に与える影響は分かっていない.感覚間統合の獲得における睡眠の学習機序を検討するために,触感覚の錯覚が視覚的錯覚と連鎖的に生じる錯学習(ラバーハンドイリュージョン)パラダイムを用い,学習後における睡眠の影響を検討した.本年度では,38名の健常者に参加してもらい,12時間間隔における睡眠群と覚醒群で比較した。その結果,睡眠群では覚醒群よりも錯学習が減少した.これまで睡眠は様々な記憶を固定化することが示唆されてきたが,本研究は錯学習においては固定ではなく消去の働きがあることを示唆した.矛盾した感覚を引き起こす仮想現実的な環境で得られた記憶は,睡眠中に削除されるメカニズムがある可能性を示した(PLoS One, 2014).さらに本年度では脳機能画像分析法(functional Magnetic Resonance Imaging: fMRI)を用いた実験が終了し,分析中である.また本プロジェクトの着想に至るもととなった研究を論文化した.睡眠による感覚間統合学習メカニズムを検討することで,睡眠の重要な機能である記憶の強化・固定化メカニズムに新しい示唆を与えることが期待できる.
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