本研究課題では当初3次元動体データを扱うことを目的としていたが、より多面的なデータおよび大規模データを扱うものとして関数データに関連するシンボリックデータ解析の枠組みへ研究を進めた。平成26年度は本研究課題の最終年度として特にシンボリックデータ解析の枠組みで研究を深化させた。研究期間全体を通じて、具体的な対象として次のデータを扱った。(1)時間的に変化するデータとしてライフログ、GPS履歴を解析(2)シンボリックデータとして、ネットワーク遅延データ、交通ビッグデータを解析(3)環境データと呼ばれる放射性物質の分布状況調査データや空間線量率測定データに対する解析である。平成26年度は (1)シンボリックデータにおけるオブジェクト間の非類似度を分布値によって定義し、階層的クラスタ手法を新たに提案した。ネットワーク遅延データに対し手法を適用し手法の有効性を示した。 (2)値域が多次元となる関数データ「多次元値関数データ」を対象とし、異常領域を検出する方法を提案した。具体的な対象として空間線量率を測定したセンシングデータに対し適用し手法の有効性を示した。 (3)複数の異なる尺度を持つ「尺度混在型データ」の解析を行う手法をシンボリックデータ解析の枠組みで提案した。尺度の異なる複数の記述を持つオブジェクト間の比較を直接行うことは困難であるため、まず記述毎に多次元尺度構成法を適用し解析対象をユークリッド空間に布置し、解析対象の関連性を分析する。同じ地域に対して異なる複数の方法により得られている空間線量率測定データに対し手法を適用しその有効性を示した。
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