研究課題/領域番号 |
24650150
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
久米 健次 奈良女子大学, その他部局等, 教授 (10107344)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 時系列データ / 特異スペクトル解析法 / 完全再構成フィルタ / 画像分解 / 主成分分析 / クラスター解析 |
研究概要 |
1.時系列の解析方法である「特異スペクトル解析法(SSA)」は、時系列を任意の個数に近似なしで分解するアルゴリスムである。本研究では、この分析手法が「固有フィルタの完全な組による分解」となっていることを見出し、このことによってSSAとフーリエ解析や主成分分析法との関係が極めて明瞭になり、かつ多次元への拡張やより一般的な分析手法開発への足掛かりが築けた。結果は、下記の論文として公表した。 K. Kume, Interpretation of singular spectrum analysis as complete eigenfilter decomposition, Advances in Adaptive Data Analysis (2012) vol.4-4, 1250023 1-18 2.この新視点に基づくと、画像処理などの多次元データへの拡張が極めて容易となり、柔軟な分解手法を構築できる。また、画像処理に活用すると、フィルタ解釈を行うことで各フィルタの特性(平滑化、勾配型エッジ検出、ラプラシアン型エッジ強調、これらの混合型など)を通じて、各分解画像の抽出成分を見出すことが出来ることがわかった。 3.さらに、フィルタ解釈に基づくと、分解した時系列のグルーピングをクラスター分析の手法を用いてフィルタ間に非類似度を定義することで系統的に行うことが出来る。これらを用いてSSAを劣化画像の修復などに活用できる道が開け、今後の研究課題になった。 4.フィルタ解釈の視点に基づいてSSA法を拡張することで、フーリエ解析に縛られない、より広い意味での「特異スペクトル解析法」の開発が可能になると考えており、次年度以降の新たな研究課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に述べたとおり、当初予定していた研究は順調に進んでおり、新たな研究への展開発展の萌芽もできつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進については、2つの大きな方向性がある。 1.「特異スペクトル解析法」は線形主成分分析法とフーリエ解析法に依拠したデータ分析手法である。フィルタ解釈に基づくことによって、この2つの大枠を超えた手法の開発を目指したい。つまり、非線形主成分分析法であるカーネル法との融合を図ることや、ウェーブレットなどフーリエ変換の枠外への拡張を図ることでより強力で柔軟な分析手法の開発を目指す。 2.通常の「特異スペクトル解析法」を洗練すること。フィルタ解釈によって、分解時系列のグルーピングの系統化、画像データの分解と再構成法、劣化画像の修復などについて既存の方法(ウィーナフィルタやカルマンフィルタ)との融合発展を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度については、旅費や消耗品費を節減することで、19679円を次年度に繰り越すこととなった。この繰り越し未使用分は、消耗品費等としてコピー紙等の購入経費に充当予定である。また、この経費と併せ、次年度は、概ね当初の計画である物品費「15万円」、旅費「10万円」、人件費・謝金「40万円」、その他「5万円」として研究を進める計画である。予定しているこれらの研究経費の範囲で、当初計画以上に新たな研究の発展を目指したい。
|