平成25年度は、DNAウォーカの自律歩行にともなう多段階重合により合成反応を行うナノ反応場について、高効率な合成反応の実現に向けたDNAウォーカの歩行速度向上のための検討を実施した。当初の設計ではナノ反応場の構築にニッキング酵素を用いていたが、より柔軟な反応条件下での動作を可能にし、歩行速度や合成の効率および汎用性を向上させるため、DNAzymeを用いた設計に変更し、歩行の要素反応が幅広い反応条件で行えること、および適切な条件について電気泳動などによる実験で確認して明らかにした。また、生物の合成機構を模した高効率な人工反応システムを試験管内に実現する上で、最適な溶液環境を明らかにすることは重要である。細胞環境と類似した環境を提供すると考えられるゲルを、架橋部分に導入したDNAのハイブリダイゼーションによって作成することで、本研究のナノ反応場と適合性の高いDNA架橋ハイドロゲルを構築した。さらに、より細胞に近い環境を再現するため、マイクロサイズのDNA架橋ハイドロゲルを作成する手法を開発した。本成果は、従来の有機合成手法では不可能な生物のように高効率な合成反応が行える人工のナノ反応場を、試験管内で再構築する上で有用である。 今後は、DNAウォーカのアダプターDNAへの結合・切断・解離の効率を向上させるための平成24年度に開発した新規技術を、今年度の成果と融合することで、高効率な合成が行える汎用のナノ反応場の実現が期待できる。
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