研究課題
概日時計は、生物の活動や生理の24時間リズムを生み出す。Clock分子は概日時計の中枢分子であり、その変異マウスは概日リズムに異常を呈することが知られる。昨年度までの研究により、 Clock変異マウス(heterozygous)に養育された野生型マウスが、野生型マウスに養育された場合と比較して、情動異常を呈し、不安レベルが顕著に亢進することを見出した。従来より、幼若期の脳内セロトニン量が、不安回路の正常発達に重要であることが知られる。興味深いことに、Clock変異マウスに養育された仔(授乳期)の脳内セロトニン量は著しく低下していた。本年度の研究では、母マウスの情動や母乳成分を調べることにより、授乳期の仔マウスの脳内セロトニン量が減少する原因を探求した。各種の行動テストを実施した結果、Clock変異マウス(母マウス)の不安レベルは、野生型マウスと大きな差は認められなかった。授乳中の個体についても調べたが、大きな差は認められなかった。また、母乳中のセロトニン前駆体の量を調べた結果、母乳に含まれるセロトニン前駆体の量も減少していないことから、母マウスの情動異常が仔マウスの情動発達に影響を与えている可能性は少ないこと、また、母乳の異常によって仔マウスの脳内セロトニン量が低下している可能性は低いことが明らかになった。Clock変異マウス(母マウス)の授乳の日内パターンが顕著に変化していることを考えると、授乳パターンが仔マウスに作用して、仔の脳内セロトニン量を適切なレベルにコントロールして情動の正常発達に極めて重要であるというモデルが提唱できた。
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