研究課題/領域番号 |
24650167
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石原 健 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10249948)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経科学 / イメージング / 線虫 / 情報処理 |
研究概要 |
本研究課題は、線虫C. elegansの中枢神経系の全てのニューロンの個別の活動を、生きたまま同時に、イメージングによって測定し、中枢神経系における情報処理の実体を可視化することを目的としている。本年度は、複数のニューロンを同時にイメージングする際に生じた問題を改善するため、蛍光タンパク質Ca2+センサーの開発を進めた。 線虫の神経細胞は、細胞によって活動していないときにCa2+濃度が異なり、低Ca2+の細胞でCa2+濃度変化を測定するためには、Ca2+に対する親和性が高いCa2+センサーが必要であることがわかった。そこで、Ca2+センサーのCa2+結合ドメインにアミノ酸置換を導入したところ、蛍光の変化量が変わらずにCa2+に対するアフィニティが約2倍高いCa2+センサーを作ることができた。このCa2+センサーを用いて嗅覚ニューロンのイメージングを行ったところ、これまで用いられてきたCa2+センサーに比べ、Ca2+濃度変化を鋭敏に検出することができた。このCa2+センサーに核移行シグナルをつけることによって、核でのCa2+濃度変化も鋭敏に検出することができるようになった。これは、密集している細胞集団の中で、個々のニューロンの神経活動を測定するために重要なことであると考えている。 神経細胞を同定するために、同定用の3色目の蛍光タンパク質を発現させ、それをCa2+センサーと同時に観察するシステムを構築した。これにより、2色をCa2+センサー(とその対照)とに使用して、1色を特定のニューロンにだけ発現させた蛍光タンパク質とすることによって、細胞を同定しやすくなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、中枢神経細胞の活動を測定をするために必要なCa2+センサーの改良や、細胞内での局在化等を進め、それらの改良により、線虫の中枢神経系での神経活動を測定するために適したセンサーを開発できたと考えている。実際、神経活動の測定が、鋭敏にかつ空間分解能高く測定することができるようになった。その結果、異なるCa2+に対する親和性を持つセンサーにより、神経活動の異なる側面が観察できることが分かった。 また、3つの蛍光タンパク質の同時の高速イメージングが可能になったことによって、多数のニューロンを観察した際に、個々のニューロンの識別が可能になると考えている。 このようなことから、本研究課題は、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果に基づき、Ca2+親和性と蛍光波長が異なるCa2+センサーを細胞質と核とで発現させ、核における神経活動を測定するためにCa2+センサーを最適化する。 また、多数の神経細胞の核でCa2+センサーを発現させた線虫を用いて、個々のニューロンを分離して蛍光変化を観察するための方法を検討する。 神経細胞を同定するための蛍光タンパク質を選択する。G/RのCa2+センサーと併用するため、近赤外に近い蛍光タンパク質、またはより短波長の蛍光タンパク質を用いることを検討する。 これらの基盤の上で、多数の神経細胞に線虫の中枢神経系のイメージングに適したCa2+センサーを発現させ、4Dイメージングシステムを用いて測定することを可能にしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
神経細胞の細胞質と核とで異なる蛍光波長をもつCa2+センサーを発現させ、刺激に依存した神経活動を測定することによって、細胞質と核とで応答性の違いを調べる。 神経細胞同定のための蛍光タンパク質を選択するため、多種類の蛍光タンパク質を発現させ、それに合わせた蛍光フィルターを用いて観察し、それぞれの蛍光の干渉などについて解析する。
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