研究課題
神経軸索と樹状突起の伸長においては、外部の様々な因子からの情報が、最終的に神経細胞内の細胞骨格系の動態の変化を導くと考えられるが、細胞骨格系の動態を制御する機構については依然不明な点が多い。我々は、癌抑制因子であるAPC (Adenomatous polypolysis coli)と相同性が高く、神経系に特異的に発現するAPC2について研究を進めてきた。APC2は複数のドメイン構造を有する分子量約230キロダルトンの巨大分子である。我々は、APC2がアクチン繊維並びに微小管と共局在し、それらの動態を制御していることを見出している。本研究においては、APC2の機能解析並びにAPC2と相互作用する分子の解析を通じて、神経回路形成における新規の細胞骨格制御機構を明らかにすることを目的とする。本年度は、昨年度に引き続きAPC2遺伝子欠損マウスの解析を進めた。その結果、いくつかの神経投射系において、神経軸索の投射の異常を見出した。さらに、行動学的な解析を行った結果、APC2遺伝子欠損マウスは記憶・学習障害を示すことが明らかになった。一方、APC2が細胞骨格の制御機能を発揮するのに必要な領域を明らかにするために、APC2について、さまざまな部位欠損変異体を作成して解析を行った。その結果、細胞骨格の制御に重要であると示唆される領域が明らかになりつつある。また、APC2はリン酸化によって活性の制御を受けることが推測されている。そこで、リン酸化が予想される候補アミノ酸について、置換変異体を作成し解析を行った。その結果、活性制御に重要なリン酸化部位が明らかになりつつある。
4: 遅れている
前年度に動物飼育施設で生じた感染事故の影響を受け、解析するマウスが非常に不足する状況が続いたため。
解析に使用可能なマウスを確保したのち、下記の解析を進めることにより、APC2の脳神経系形成における機能を明らかにするとともに、APC2が関与する情報伝達経路を明らかにする。A.APC2遺伝子欠損マウスの解析:(1)シナプス形成の解析(前年度よりの継続)、(2)行動解析B.APC2が関与する情報伝達経路の解明:(1)同定した膜タンパク質との相互作用の解析、(2)その他の相互作用分子の解析
動物飼育施設で起こった感染事故のため、解析に必要なマウスのほとんどを準備することができず、解析が滞ったため。APC2遺伝子改変マウスの飼育・管理費並びに、解析に使用する。
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