研究課題
細胞分裂により神経幹細胞から誕生した未分化な神経細胞は、分裂領域から適切な部位に移動して神経層形成や神経核形成を行うとともに、分化・成熟を行い、軸索と樹状突起を伸展させて他の神経細胞等との間に特異的シナプスを形成する。これらの過程において、外部の様々な因子からの情報が最終的に神経細胞内の細胞骨格系の動態の変化を導くと考えられるが、細胞骨格系の動態を制御する機構については依然不明な点が多い。我々は、神経系に特異的に発現するAPC2 (Adenomatous polyposis coli 2)という細胞内分子に注目して研究を進めてきた。APC2は複数のドメイン構造を有する分子量約230キロダルトンの巨大分子である。我々は、APC2がアクチン繊維並びに微小管と共局在し、それらの動態を制御していることを見出している。本研究においては、APC2と相互作用する分子の解析を通じて、新規の細胞骨格制御機構を明らかにすることを目的とする。本年度は、知的障害等を有する姉弟の患者に見出されたAPC2遺伝子の変異について解析を行った。これらの患者においては、APC2遺伝子にホモのフレームシフト変異が存在することが明らかになった。これにより、C末側の約3分の1の領域が異常なアミノ酸配列に変化している。変異APC2タンパク質について解析を行ったところ、培養細胞中においては、この変異タンパク質は微小管やアクチン繊維と共局在せず、これら細胞骨格に対する制御能を完全に欠失していた。また、初代培養神経細胞においては、野生型のAPC2が細胞体と神経突起の微小管並びにアクチン繊維に沿って分布するのに対して、変異APC2タンパク質は主に細胞体に集積するのが観察された。APC2タンパク質のdeletion解析により、アミノ酸配列の1821-1900の領域が細胞骨格への相互作用に必須であることが明らかになった。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件)
Cell Reports
巻: 10 ページ: 1585-1598
10.1016/j.celrep.2015.02.011.
Journal of Biochemistry
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