研究概要 |
線条体は大脳新皮質や視床との神経回路形成を通じて様々な脳機能の発現に重要な役割を演じる大脳基底核の主要な神経核である(Gerfen, 1992; Kawaguchi, 1997, Nambu, 2008)。線条体を構成する主要な神経細胞(9割以上を占める)である中型有棘細胞(線条体投射ニューロン)は、マウスにおいては外側基底核原基において胎生期10日目から生後0日付近に至るまでの長い期間を通じて産生されることが示されている(Bayer, 1984, Marchand & Lajoie, 1986)。早生まれの神経細胞はパッチ区画構成細胞としてまた遅生まれの細胞はマトリクス区画構成細胞として線条体を特徴づけるモザイク構造を形成する(van der Kooy & Fishell, 1987)。本研究では発生期においてどのようにして線条体を特徴づけるモザイク構造が構築されているのかを明らかにすることを目的とする。初年度においては、それぞれ異なる二種の神経細胞群を生まれのタイミングの違いを利用することで同時に標識し、それぞれの細胞動態を同一切片上で解析するスライス培養系を確立した。そして、パッチ区画構成細胞は脳室帯における神経前駆細胞から発生し予定線条体領域であるマントル層に移動した後の段階においては細胞移動能は減少しほぼ静止状態にあること、また一方マトリクス区画構成細胞はマントル層に移動した後の段階においても継続的に細胞移動能を保持し、多方向への(ランダムな)細胞移動像を示すことを明らかにした。
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