研究課題/領域番号 |
24650176
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田辺 康人 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (10311309)
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キーワード | 線条体 / モザイク構造 / 細胞移動 |
研究概要 |
線条体を特徴づける構造として、パッチ・マトリクス区画よりなるモザイク構造が存在する。パッチ区画は早生まれの、一方マトリクス区画は遅生まれの線条体投射ニューロンから構成される。線条体パッチ・マトリクス構造はそれぞれが異なる分子マーカーを発現する異なるサブタイプから成るだけでなく、それぞれが異なる入・出力回路を形成する。また、パッチ・マトリクス細胞の機能の不均衡は運動失調をともなう様々な大脳基底核の神経疾患の発症に関与することが示唆されており、どのようにして線条体のパッチ・マトリクス構造が構築されるのかは非常に重要な問題であると考えられる。 我々は、in vivo electroporation法による遺伝子導入法とスライス培養法を組み合わせて、パッチ細胞とマトリクス細胞のモザイク構造形成過程における細胞動態を解析する実験系を独自に構築してきた。これまでの解析の結果、胎生期のモザイク構造形成初期過程においては、パッチ細胞はほとんど静止もしくはごく稀に細胞移動しているのに対して、マトリクス細胞は活発に細胞移動していることが示された。また、パッチ細胞は神経突起の伸長・退縮を繰り返し、細胞移動時には伸長した先導突起に細胞体が後続するといったsaltatory patternを示すことを明らかにした。さらに、パッチ細胞同士が伸長した神経突起を絡み合わせて、お互いに接近していく様子が観察された。これらの観察結果は、パッチ細胞同士はお互いに親和性をもち、伸長した神経突起を介してまずパッチ細胞同士が集合体を形成する様相が示唆された。一方、マトリクス細胞は、双極性の神経形態をとり、パッチ・マトリクス細胞に対して、親和・反発のいずれの細胞動態も示さなかった。これら異なる細胞動態がモザイク構造構築につながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で予定されていた、線条体モザイク構造形成初期過程におけるパッチ・マトリクス細胞の細胞動態に関してはほぼ順調に解析が進んだと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究過程において明らかにされた予想外の点は、マトリクス細胞が少なくともモザイク構造形成初期過程においては、パッチ細胞に対して反発作用を示さないといったことである。パッチ・マトリクス細胞によって作られるそれぞれの区画は同一の細胞腫からのみ構成されており、今回明らかとなったパッチ細胞同士の親和性だけでは、マトリクス細胞がパッチ区画からどのようにして分別されるのかは説明しえない。この問題点を取り扱うために、モザイク構造形成後期過程に着目し、果たして、マトリクス細胞はパッチ細胞に対してどのようなふるまいを見せるのか、また、マトリクス細胞は、モザイク構造形成初期過程においてパッチ細胞が示した細胞動態と比べてどのようなふるまいを見せるのかを解析していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、線条体パッチ細胞およびマトリクス細胞のスライス培養での細胞動態を胎生16日胚から作成した脳切片を用いて解析し、論文として同行する予定であったが、予想外の結果が出てきたため、計画を変更することになったために、未使用額が生じた。 生後1日目の脳切片を用いたスライス培養による細胞動態の解析を追加して行い、全体をまとめ論文投稿による発表を行うこととし、未使用額はその経費に当てることとしたい。
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