研究課題/領域番号 |
24650181
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
遠山 稿二郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10129033)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電子線トモグラフィー / 反射電子像 / 中枢神経 / 細胞間隙 / 連続切片 / 三次元構築 |
研究概要 |
ラットおよび小型霊長類(コモン・マーモセット)の中枢神経について試料作製を行い以下の実験を実施した。 A.【2 軸電子線トモグラフィー】比較的厚い切片(200nm)について、 2軸トモグラフィー(DEMT)を実施し、細胞間隙を含むシナプス周囲での解析で、シナプス間隙における特有の超微細構造を見出した。また、共同研究において、plasma cell とT細胞の突起の融合を DEMTを用いて証明した (J Electron Microscopy. 62(2) 317-320,2013) 。 B.【反射電子像の解析】従来の透過電子顕微鏡の試料作製法とは大きく異なるため、以下のとおり新たな条件を設定した。 ①【超薄連続切片の支持材料の検討】試料台の大きさに合わせてトリミングしたスライドグラス上に連続超薄切片をすくい取る。なお、スライドグラスはスズあるいはオスミウムでコーティングし導電性を確保する。②【特注試料台の作製】同一試料の繰り返し観察のため、観察部位が特定できる特注の走査電子顕微鏡用試料台を設計し作製した。一度電子顕微鏡の試料台から外したサンプルを、再度、観察する際、以前観察した部位の特定が可能となり、観察の効率化と精度向上に貢献できる。③【電子顕微鏡の撮像条件の検討】適性条件を検討し、目的の構造が明瞭に判断できる、20-40万倍での画像取得条件を確定した。④【問題点とその解決策】国内での液体ヘリウムの入手が困難となり、急速凍結については本年度は 1回のみ、次年度以降も状況の改善は期待できない。そのため、当研究室で既に作製された標本を活用する。なお、平成25 年度、反射電子像を取得できる走査電子顕微鏡が本学に導入されることから、電子顕微鏡室での学外利用は大幅に縮小される見通しである。 以上のとおり、初年度の目的であった、電子顕微鏡の試料作製法と撮像条件の基礎が確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は試料作製法の基本的条件を確率することが目標であったので、ほぼ達成できたと考える。今後、補足的な検討が必要な点も考慮し、この区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度に得られた観察条件に基き、ラットおよびマーモセットの小脳について、さらに観察を続け、データを3次元的に解析して、細胞間隙の連続性について明らかにする。また、データ解析に際しては、多面的なソフトの活用により、新規性のある解析法を目指す。また、神経活動の要であるランヴィエ絞輪部 およびシナプス周囲における細胞間隙の解析も実施する。 これと並行して電子顕微鏡の新しい解析技術としての反射電子像の超広域観察への活用について基礎技術の検討を開始したい。なお、急速凍結については、液体ヘリウムの入手が困難である場合を想定し1回を予定するが、これまでに作製した試料を最大限活用する。 また、液体ヘリウムの入手が困難であることが予測されるため、試料の例数を増やすことを取り止め、同じ電顕解析法を用いてできる超広域観察もテーマに加え、今後の反射電子を用いた手法の幅を広げる足掛かりとしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費は、実験に用いる試薬、抗体、などの消耗品、研究成果発表、情報収集、情報交換などのための旅費、および、論文作成に関わる諸経費に使用する。なお、本学への走査電子顕微鏡の導入は8月と予測されるため、それまでの期間、これまで同様、東北大農学部の電子顕微鏡を使用するための経費が必要となる。
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